トップページ > スカラシップレポート > 貴島萌 - 2020年 11月

2020.11
貴島萌

学術部門 - 第49回生
University College London (UCL)

直近の活動報告

日本もそろそろ寒さが本格的になってきた頃かと思いますが皆様ご体調お変わりありませんでしょうか。ロンドンはとてもイギリスらしく曇天続きで寒いですが、ようやく11月初めから始まった一ヶ月のロックダウンが終わろうとしています。

ロックダウンの中でも今回は医学部生はkey workerという位置付けになったので幸い臨床の授業は続いていました。今月はずっとGeneral Practice (家庭医)での研修でした。去年もGPでの授業はあったのですが研修と言うよりは授業だったので今回初めて仕事内容を観察しお手伝いしました。GPは日本でいう、かかりつけのお医者さん、と言う感じなのですが、イギリスでは個人個人のクリニックではなく、グループでNHSから仕事を委託する形で医院を運営、経営しています。コロナ禍で、なるべく対面での診察を避けるため、患者さんは皆最初にGPクリニックに電話をして受付の方にトリアージされてから医者と電話診察があります。そのあと医者の判断で対面の問診や触診、病院へのリファーの有無が決まります。患者さんの主訴は本当にピンからキリまであり、家庭医の幅広い医学知識だけでなく社会のサポートシステムの知識も、患者さんを本当の意味で助けるにはとても大切だと言うことをしみじみと感じました。

 家庭医の役割は沢山ありますが、主なものは三つあります。一つ目はそれなりに簡単に治せるものに対してのアドバイスをすることや、薬の処方をすることなどです。二つ目はクリニックではできない事(検査、複雑な処置や治療、心理療法、法的アドバイスなど)を他の医療機関、または専門機関に委託する事です。これは医療の面と生活の面で分かれていて、後者では病気証明書を発行することから、生活保護との連携、社会的処方 (social prescribing)まで沢山できる事があります。三つ目は定期的な患者さんのフォローアップです。もちろん、患者さんの症状や病歴から診断を下しそれぞれの病理やマネージメントを考えるのは勉強になる上、楽しいですが、おそらくコロナのせいもあり、現在は半分以上の患者さんの問題が家庭、経済など社会的要因があるものと言っても過言ではありません。その上、社会的な問題の方が解決が難しいので、やはり考えさせられるのはこちらの問題の時の方が多いです。社会的処方とは日本ではあまり耳にしませんが、躁鬱などでカウンセリングや薬以外、例えば運動のクラスや美術の教室など、孤立しがちな人や自発的には始めにくいが精神的にも身体的にも効果がある活動に繋げる事です。日本で近いサービスとしては緩和ケアなどがありますが、これはほぼ癌患者に限ったサービスなので社会的処方はもっと広範囲の患者を拾えるものかと思います。日本はどうかあまりよく知りませんが、イギリスの家庭医はどこに助けを求めたらいいのか分からない人達が人生の問題をまとめて相談しにきているようです。それだけ信頼され、頼られている職業なのだと思うと、GPには頭が下がります。

 また、相対的貧困や家庭環境が健康に及ぼす害はたったの6週間でも明白なので、それに関してもう少し学びたいと思い、最近Health Gapという本を読み始めました。人々の社会的地位がどのように健康状態に影響を及ぼすのか、またそれはどのようにしたら変えられるのかと言う事を考察している本で、とても面白いですし、勉強になります。その他にも、人々の抱えている問題を色々な観点から見て学ぶ一環で、また直接役に立ちたいという思いから、「あなたの居場所」と言うオンラインでのチャット形式での相談所のボランティアを始めました。かなりヘビーな相談が多く最初はとても緊張しましたが少しずつ、無理のない範囲で続けていきたいと思っています。

 コロナのPCR検査のプロジェクトは幸い助言してくださる感染症の専門の先生を見つけました。私の大学(UCL)がちょうど多数の生徒を定期的に検査する事を検討しているらしいので、もしかしたらUCLと協力してできることになるかもしれません。次のUCLのマネージメントのミーティングに入れてもらえることになっているのでゆっくりですが事が進んでいて、どんな事ができるのか楽しみです。

 長くなりすぎてしまったのでまた次回色々なご報告をできればと思います。

気づけばもうすぐ師走、疲れもたまり風邪をひきやすい季節ですので皆様くれぐれもご自愛ください。

今後の予定

なんと2年ぶりに日本に帰国します!2週間の自宅隔離があるのでほぼ外に出て楽しむ時間はありませんが、久しぶりに家族やペットの犬に会える事を楽しみにしています。