2025/06/19

細田 翠 活動レポート

2025/06/19

細田翠

細田 翠 Midori Hosoda

世界の人々の健康格差を解消し、患者を人間としてみられる医師を目指しています。現在はオックスフォード大学修士課程で、ブータンにおける若年薬物依存症者のナラティブ分析を行っています。学部はコロンビア大学で、医療文学と生物学と…

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

私の将来の夢は、あらゆる社会の人々に貢献する医師になることです。そのきっかけは、障がいのある人々への差別や偏見がある社会に対する疑問を幼い頃から感じていて、社会的、経済的、文化的な障壁により医療へのアクセスが制限されている人々に対して、医療を提供することができる医師になりたいと思ったからです。その為に、アメリカのメディカルスクールで医師免許を取得し、医療を必要としている世界の人たちに貢献すべく国際機関等で働きたいと志しました。特にサブサハラ・アフリカや南アジアでは、病気や障がいのある人々への治療ケアが顧みられず、例えば鎌状赤血球症のような慢性疾患の人々は診断や治療の機会を奪われています。混迷する世界情勢の中で、様々な社会問題と向き合いつつ、人々の健康やウェルビーイングを守っていきたいです。

エコーガイド下静脈穿刺の練習(2025年5月)

――日常生活、生活環境について

現在メディカルスクールの2年目で、毎日臨床実習で医学の学びを深めています。朝は夜明け前に起床し、予習してから病院に行き、一日中病院で実習をします。夕方に帰宅し、夕食をとった後に、有志で勉強会をしています。体力的、精神的にも負担が多い日常生活ですが、だからこそ健康管理が重要になってきます。

私は入学してから、学業や研究と同時にトライアスロンに取り組んできました。トライアスロンは、水泳・自転車ロードレース・長距離走の3種目を連続して行うという競技です。元から運動がとても好きなのでトライアスロンを始めましたが、医師という仕事の重要な側面としてスタミナをつけ、持久力を維持し、回復力(resilience)を持つ能力を涵養するのにとても適したスポーツなので、尚更やり甲斐を感じました。

私は1年生の時にイェール大学のメディカルスクールにトライアスロン部を設立しました。ビジョンとして、トライアスロンを誰もが参加できる「インクルーシブ」なスポーツにしたいと思っていたので、泳ぎ方を学びたい新入生、ランニングのパートナーを探している上級生、安全確保のために一緒にサイクリングできる仲間を探している医学生が集まれるようなコミュニティを作り、今となっては60人近くの医学生が興味を示し、練習に参加しています。

イェール大学附属病院の循環器内科の教授、研修医、同期の医学生(2025年4月)

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること

2025年3月から臨床実習が始まりました。最初は、循環器内科で1ヶ月実習を行い、現在4月は、神経内科のローテーションとしてICU(Intensive Care Unit)で働いています。毎日予習と復習を重ね、実際に患者さんと話したり、ケアに参加したりしています。

メディカルスクールの最初の1年半は、主に臓器ごとの深い知識の蓄積を続けて来ましたが、臨床の場面において、今はそうした知識が土台となって、人の身体を見る際に包括的にインテグレートされた形で理解することの重要さを改めて実感しました。また丁寧なコミュニケーションや周りの人との繋がりが大切であることも強く感じました。特に患者さんやご家族と信頼関係を築き、納得するまで十分に説明したりすることは重要で、医学生だからこそ、そうした対応に時間をかけることが私の役割で、責任であると考えています。患者さんを看るには医学的知識だけではなく、看護師や言語聴覚士や薬剤師といった様々な職種との連携が必要なことも実感しました。

――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負

今後は、臨床実習が2026年3月まで続きますが、それと並行して米国医師国家試験の受験勉強をしています。また、イェール大学で鎌状赤血球症を専門とするDr. Cece Calhounの研究室で自分のプロジェクトを持っているので、それも推進します。この研究は、コロンビア大学の学部生時代に、STRIVE(Sickle Cell Teens Raising Awareness, Initiating Change, Voicing Opinions, and Empowering Themselves)という鎌状赤血球症を患う中高生を支援する学生団体に所属し、部長として4年間活動したことがきっかけとなっています。このSTRIVEの参加者を対象に、参加の前後で彼らの病気に対する知識、家族や友人など周囲との関わり、病を持ちながら自立して生きる事に関する変化・影響を明らかにする調査を行っています。アンケートとインタビューでデータ収集が済んでいるので、現在はそのデータを分析しているところです。

ニューヨークで開催されたトライアスロン大会(2024年9月)