2021/07/15

原野 新渚 活動レポート

2021/07/15

原野新渚

原野 新渚 Nina Harano

コロンビア大学ではリベラルアーツ教育を通して多方面から有機的に物事を考察する力を養いながら、豊富な研究資源を活用し神経科学の研究に取り組んできました。学部では主に脳損傷後の感覚統合機能回復についての研究を行いました。博士…

将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

私の夢は、神経科学の研究を通して宇宙医療に携わる事です。具体的には、微小重力の宇宙環境で起こる未解明の視力障害解決に関わる研究を行いたいと思っています。この夢を志す様になったのは、宇宙飛行士になりたいという夢を自身の視力が足りない事から諦めなければいけなかった経験からでした。そんな時、二光子顕微鏡で神経細胞を初めて観察し、その宇宙に浮かぶ星の様な見た目に感動した事がきっかけで宇宙を彷彿とさせてくれる神経科学に惹かれる様になりました。今は、両分野の類似性を見つけるだけでなく、実際に神経科学の研究を通して微小重力環境の視神経への影響を調べ、宇宙医療の発展に貢献したいと考えています。

二光子顕微鏡で観察した蛍光タンパク質を発現した神経細胞(自身撮影)

日々の生活、生活環境は?

大学では「研究」の曜日と「授業」の曜日をそれぞれ分けて、毎週のスケジュールを組んでいます。月・水に授業が集中する様にスケジュールを組み、火・木・金は所属しているザッカーマン研究所にある神経科学の研究室に通います。研究所は寮のあるMorningsideキャンパスから徒歩15分程のManhattanvilleキャンパスに位置しているので、研究室への移動は良い気分転換と運動になっています。勉強をしているとつい座りがちになってしまうので、この様な徒歩での移動をしたり、図書館では階段を使って最上階のフロアを使うなど、短時間で気分転換になる活動を意識的に挟んでいます。

ザッカーマン研究所
大学の研究室での様子
研究発表を行っている様子(コロナウィルスの影響でオンラインで開催)

コロンビア大学にはコアカリキュラムと呼ばれる少人数制で行われるディスカッションベースの一般教養授業があります。その為私は神経科学専攻ですが、哲学や文学の、”文系”授業も毎学期履修しています。文系の授業は理系の授業に比べてリーディングが多いのですが、試験は反対に数が少なく、長期間にわたってエッセイを数本仕上げます。その為、エッセイ提出期限の前に慌てたり時間を多く取られて他の科目が疎かになることがないよう、自分の中で期限を設けて前もって仕上げる事を心がけています。

西洋文学のクラスでメトロポリタン美術館に行った際の一枚

授業や研究が18:00時頃には終わるので、食堂でご飯を食べた後は図書館で夜12時頃まで勉強をする事が多いです。コロナの期間に大学に残っていた際は、生徒がいなくなったキャンパスは閑散としていたのですが、パンデミック前は深夜まで生徒で溢れ返る活気のある図書館でした。NYは冬になると日照時間が短く気持ちも落ち込みがちなので、できるだけ太陽にあたる様にしたり、ビタミンDが多く含まれている食材を摂取したりと、モチベーションをキープする為の工夫を日常生活で気をつけています。

冬のキャンパスの様子

夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていることを教えてください!

宇宙医療に携わるという夢を叶えるために、研究経験を積むだけでなく、常に「良い研究者になるには」という事を意識して行動する事を心がけています。コロンビアの研究室でもインターン先(OIST)の研究室でも、新しい事を学べるのは先輩の学生や研究者の方々のメンタリングのおかげなので、研究において次世代に伝えるという事は欠かせないのだと実感しております。Well-roundedな研究者を目指すためにも、一見研究に関係のない活動、例えば、アウトリーチ活動なども、長い目で見ると良い研究者になる事に役立つと考え、機会を頂けた際には時間を割いて力を入れるようにしています。また、一般教養のコアカリキュラムなど一見神経科学とは繋がりのない分野に取り組む際は、常に神経科学との関連性を意識して考える様にしています。そうする事で、自身の研究内容を分野外のより幅広い層の方々に興味を持ってもらうために必要な類比や表現の方法を増やしていきたいと考えています。

最後に、これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負をどうぞ!

秋からは3年生になり、授業の専門性が増す事がとても楽しみです。例えば今までは心理学の基礎の授業しか選択できなかったものも、来年からは興味分野の”視力”に関しての心理学のセミナー授業なども履修できる様になります。

専門性を高める上でこれから挑戦したい事は、さらに研究においてスキルを付ける事です。例えば、今までプログラミングや統計などは全くの分野外だと思っていました。しかし神経科学の研究を行う上ではどちらも避けては通れないものだと気づいたので、新しいプログラミング言語の習得やそれらを使用したデータ解析など、新たな事にもチャレンジしていきたいです。

このように充実した学生生活を過ごせるのはご支援くださっている皆様のおかげなので、財団の方々を筆頭に、日頃から支えてくだっている方々に心から感謝しています。夢の実現に向けて一歩ずつ、着実に成長していきたいです。