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第51回財団総会【午前の部】


午前の部では財団の歩みや活動内容の説明から始まり、奨学生トピックスとして各部門の奨学生の活躍や活動を紹介しました。続いて新規奨学生の紹介や3名の成果報告、グループに分かれての交流セッションなど、多彩なコンテンツで交流を深めました。

◇新規奨学生紹介
2022年からスポーツ部門の制度をリニューアルし、史上最年少12歳の奨学生が誕生するなど、今年も世界に挑戦する頼もしい新規奨学生が集結。やや緊張した表情の方もいましたが、皆さん力強くこれからの意気込みや取り組んでいるテーマなどを発表しました。

器楽2名、スポーツ7名、アート2名、学術8名、合計19名の学生が採用

 

◇成果報告①学術部門44・49回生 久保田 しおんさん
久保田さんは、現在世界最大のニュートリノ研究グループであるDUNEにて、ニュートリノ検出器の作成プロセスにおけるDWA(Digital Wire Analyzer)部門責任者及び、アップグレード後の検出器、QPixのデザイニングチームのコアメンバーとして活躍しています。
なぜこの宇宙には物質と反物質の非対称性が発生したのか、そしてなぜ私たちはこの宇宙で存在できるのかというご自身の研究について、「物が見えるとはどういうことなのか」という身近な切り口から物質と反物質の関係性などを説明しました。

物が見えるとはどういうことか、という身近な事柄からご自身の研究の内容について説明


また、現役生からの事前質問で多かった「先が見えない世の中でどうやって判断や決断していくべきか」に対して、ご自身の7年前のFacebook投稿を元に、思った成果を得られなかった時どういう気持ちで乗り越えてきたのかを赤裸々にトーク。そして「わからないものはしょうがない。だからこそ自分が絶対に頑張れるものを選んで頑張るしかない。頑張っても報われない努力が多いことを覚悟し、努力し続けなければ成果にはたどり着けない。うまくいかないことがあってもくじけずに頑張ってほしい」と力強いアドバイスをくれました。

学術部門44・49回生 久保田 しおんさん


発表後の質疑応答では、物質・反物質についての質問はもちろん、物理学者が仮説を立てる際に、「数式は美しくこうあるべきだ」と言う様な、ある意味宗教的な思想・信念的な視点から仮説をたてることがあるといった興味深い話に発展。部門を超えて財団生から質問が集まり、大いに盛り上がりを見せました。


◇成果報告②アート部門50回生 福田由美エリカさん
続いて、インスタレーション、参加型パフォーマンスアーティスト福田さんが発表。福田さんは武蔵野美術大学にて油絵と現代美術を学んだ後、現在はシカゴ美術館付属美術大学大学院に所属し、移民文化に焦点をあて、環境とアイデンティティの違いを観客に体験させるような創作活動をしています。発表では、鑑賞者が一緒に参加して作品を作るといった参加型の作品を2つ紹介しました。

一つ目は大きな粘土の塊から、参加者に「1枚のスライスを切り取って、切り取った方と塊の山両方に名前をつける」という参加型の作品。参加者が切り取っていくと塊に記載がある名前が変化していくということから物事のうつろい、何が残って何がなくなっていくのかを体感することができるという興味深い作品でした。

一つ目の作品:1枚のスライスで山を切り取ってそれぞれに名前をつける という鑑賞者参加型の作品



続いて二つ目の作品紹介へ。最近では移民文化だけでなく、コミュニケーションのずれに焦点をあてた作品を作っているという福田さん。過去の体験について説明を聞きながら、福田さんが混色し色を作成していくというセッション作品を紹介しました。

二つ目の作品:言葉で説明を受けた記憶や経験について福田さんが混色して色を作っていくというセッション作品


セッションをしながらさらに混色を重ね会話を重ねて色を近づけていくことで、どのくらい相手と理解を共有できていれば実際に思いや情報を共有できるのかといった興味深いテーマの追及に、多数の質問が挙がりました。

実際にこのセッションアートを体験した財団生から実際に体験した時の感想をはじめ、「アートからアイディアを起草するのか、それともアイディアからアートを生み出すのか」「治安が悪い国や土地でのアートの存在意義」など様々な質問が飛び交いました。一つ一つ丁寧に言葉を紡いで発表する福田さんの言葉に、引きこまれるように聞いている奨学生の姿がありました。

アート部門49回生 福田由美エリカさん

 

◇交流セッション
いくつかのルームに分かれて実施された交流セッションでは自己紹介とともに「この一年間で挑戦したいこと」をテーマにトークしてもらいました。後日アンケートやレポートなどで「とても素敵なメンバーと出会うことができ、幸せでした。」「皆様とても輝いていて、大いに刺激を受けました!」といった嬉しい声を多数いただきました。

 

◇成果報告③器楽部門44回生 上野 通明さん
交流セッションの後には上野さんが成果報告で登場。事前アンケートで挙がっていた質問に回答するインタビュー形式で発表しました。上野さんは2015年秋よりドイツのデュッセルドルフ音楽大学に在籍し、昨年2021年にはジュネーブ国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人として初優勝されるなど輝かしい活躍をしています。


「チェロを始めたきっかけやチェリストとして活動していくことを決断したタイミングは」という質問には、チェロを始める際、両親の同意が得られず、約一年待ってやっと始められたこと、チェリストとして活動していくきっかけなど様々なエピソードを話しました。

器楽部門44回生 上野 通明さん


また、日本人初優勝となったジュネーブ国際音楽コンクールについては、出場者にしかわからない苦労、裏事情などもざっくばらんに披露。そして「本番にどのように気持ちと演奏を合わせていくか」「メンタルコントロールについて」といった質問に対してはコントロールの方法なども丁寧に回答しました。印象的だったのは「大きな大会の舞台でこそ、審査員のためではなくコンサートだと思って楽しむ」という発言。彼の音楽に対する真摯な思い、芯の強さを感じさせる力強い言葉がありました。


コロナやウクライナ情勢など、昨今の不安定な情勢の中でも、今自分がすべきことに集中し成果を出し続けている発表者の言葉に、多くの財団生が真剣に聞き入っている姿が見受けられました。また、沢山の質問が集まった質疑応答や交流セッションなど、部門を超えて活発な交流が行われ多くの財団生にとって好奇心が刺激された充実した時間となったようです。

(※午後の部はこちら)