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上野通明さん
(チェロ)

上野通明チェロ・リサイタル ジュネーヴ国際音楽コンクール優勝記念コンサート

2022.1.20(木) 19:00
紀尾井ホール

チェロ:上野通明
ピアノ:須関裕子

◆プログラム
バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第2番二長調 BWV1028
ヒンデミット:3つの小品より「幻想小曲」作品8-2
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番ト短調 作品5-2
ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調
プーランク:チェロ・ソナタ 作品143

昨年10月のジュネーブ国際音楽コンクールで優勝された上野さん。この日は「ジュネーヴ国際音楽コンクール優勝記念コンサート」と銘打ったコンサートが紀尾井ホールで開かれました。聴衆みんなが、優勝されたばかりの上野さんの第一声を聴き逃さぬよう耳を澄ませ、息をも止めたような静寂で始まった印象に残るコンサートでした。

コンクール、留学、これからの事など、今の心境を伺いたくてたくさん質問をしてしまいましたが、とても丁寧に答えてくれました。

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Q.ジュネーブ国際音楽コンクールチェロ部門優勝おめでとうございます!このコンクールはバロックから現代音楽、リサイタルから協奏曲まで、課題が大変なことで有名とのことですが、一番大変だったのはどんなことでしょうか。

コロナで予選が録画審査となったので、やはり生で聴衆や審査員の皆様に聴いていただくのと、無観客でカメラやマイクだけを前に演奏する違いに戸惑いました。課題曲の時代や演奏形態のバラエティがとても広いユニークなコンクールでしたが、予選をチェンバロと演奏できたりと大変貴重な経験となりとても良かったです。 

ジュネーブ国際音楽コンクール公式 YouTube より

Q.コンクールで優勝されて、得たものの中で一番大きなものは何でしょうか。 

先ずは自分が大好きなルトスワフスキのコンチェルトと共に世界中の沢山の人々に知ってもらえたという事だと思います。お陰様でヨーロッパ各地でもさまざまなチャンスを頂けるようになり、小さなコンサートから大きなものまで色々ですが、その一つ一つにベストを尽くして更に活動の場を広げていきたいと思います! 

ジュネーブ国際音楽コンクール公式 YouTube より

Q. この日のコンサートは、「ジュネーヴ国際音楽コンクール優勝記念コンサート」と銘打ったコンサートでしたが、どんなことを思いながら演奏されていましたか。 

ずっと温かく応援して頂いてる先生や皆様のお陰と本当に感謝の気持ちで一杯で、ようやくここに辿り着いた今の自分を聴いて頂き、その感謝の気持ちを精一杯お伝えしたいと思いました。 

ピアニストの須関裕子さんと ご本人より


Q. ドイツのデュッセルドルフ音楽大学で、お声を掛けて呼んでいただいた師匠について、ずっと勉強をされていますが、ピーター・ウィスペルウェイ氏はどんな師匠で、この6年間でどんなことを学ばれましたか。 

初めはたった一人の弟子だった自分ですが、以来ずっと大変良く面倒を見ていただき、とても熱心に指導して頂きました。ちょっと変わり者のような印象かもしれませんが、音楽に対しても人に対してもとても誠実で努力家で、だからこそ彼の独特な考えやアイディアにも説得力があるのだと思います。ソリストとしても人間としてもとても大切だと思える事を沢山学ばせて頂き、これからも学び続けていきたいと思います。 

Q.昨年の秋からベルギーのエリザベート王妃音楽院にも籍を置き、ドイツとベルギーを行き来しながら勉強されていますが、この新しい環境はいかがですか? 

新しい先生は曲も演奏技術も非常に論理的に分析するので今までとまた違った刺激を受けます。ドイツとベルギーを行き来するのを楽しみにしていたのに、このコロナでヨーロッパでの行き来もできるだけ避けたいような環境になってしまいました。一日も早く何の変更も心配もせずに演奏活動をすることができ、新しい学校や環境をフルに活かした活動ができるようになるよう祈っています。 

Q.これから先の具体的な目標はどんなことに定めていますか。

 まずはバッハ無伴奏やT shot シリーズなどのCD録音で皆様に心から楽しんでいただけるようベストを尽くし、また演奏活動においてはヨーロッパでのオーディションやコンクールのおかげで新たな演奏の機会も色々頂いていますので、自分の音楽を追求し続け、さらに大きなチャンスを頂けるよう精進してゆきたいです。

また、バッハやベートーヴェンなどのライフワークにしたい作曲家たちの作品を更に掘り下げてみたり、あまり知られていない名曲を発見し、その魅力を皆様にお伝えできたら、というようなことにも大変興味があります。 

Q. 6年間以上過ごしたドイツのケルンはどんな街ですか。この先、活動拠点を移すとしたら、どのような街に魅力を感じていますか? 

ケルンも良い街ですし、デュッセルドルフもとても良い街です。ベルギーに一旦移るかもしれませんが、最終的にはやはり留学して最初に住んだデュッセルドルフを拠点にすると活動しやすいかもしれないと思っています。

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上野さんの回答で印象に残るのは「感謝」という言葉です。「ようやくここに辿り着いた今の自分を聴いて頂き、その感謝の気持ちを精一杯お伝えしたい」と臨んだというコンサート。どんなに大きなコンクールで優勝しても、演奏活動が増え名前が世界に広がっても、上野さんのこの謙虚で真摯な姿勢は変わらないですね。

ジュネーブ国際音楽コンクールチェロ部門優勝を機に、これから益々活動の場を広げていかれることでしょう。その姿を間近に見ることができるのは本当に幸運です。

この日の「チェロ部門優勝記念コンサート」の様子は、3月10日NHKBSプレミアム「クラシック俱楽部」で放送予定です!