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阪田知樹さん
(ピアノ)

阪田知樹 ピアノ・リサイタル

2020.8.29(土) 18:00
横浜みなとみらいホール

◆ピアノ:阪田知樹

◆プログラム
<第1部>
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K.283
シューマン:交響的練習曲 Op.13
<第2部>
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
<第3部>
リスト:ラ・カンパネッラ
チャイコフスキー(フェインベルク編曲):交響曲
 第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」より第3楽章 スケルツォ
クライスラー:(ラフマニノフ編曲)愛の悲しみ
ショパン( バラキレフ編曲):ピアノ協奏曲第1番
 ホ短調 Op.11より 第2楽章 ロマンス
ヴェルディ:(リスト編曲)リゴレット・パラフレーズ

アンコール曲:F.シューベルト (リスト編曲): 連禱 S.562/R.247

8月に入り少しずつ生の演奏会が始まりましたが、阪田さんにとってリサイタルは約半年ぶりだったそうです。特別な思いだったのではないでしょうか。また、演奏できない期間をどのように過ごされていたのか、演奏会が再開され始めた今何を思い描いているのか等、お聞きしました。

Q1. この日のコンサートはもともと3月1日に予定されていたコンサートで、プログラムもその時に用意されていたものと同じとのことでしたが、取り上げた作曲者は7名と盛りだくさんのプログラムでした。何を意識されてプログラミングされたのでしょうか。

A1. ここ数十年では前半約45分、後半約45分という構成のリサイタルが通常となっておりますが、私が尊敬するピアニスト達が活躍していた第二次大戦前には、3部の構成でのリサイタルが主流でした。

その構成というのは、1部に古典的な作品を、2部に規模の大きなロマン派などの作品を、そして3部には、耳馴染みのある小品などを配したアンコール曲集のようなものです。今回、その失われた伝統を再現し、聴きに来て下さる皆様に提示することを目的としてプログラミング致しました。

Q2.この日のコンサートは、ソロリサイタルとしては約半年ぶりのリアルのコンサートとのことでしたが、演奏中は何を思いながら演奏されていましたか。また、演奏終了後は何を感じられましたか。

A2. 自分が奏でた音がホールに響くのを聴いて、やはり改めてホールでのリサイタルはいかに特別で幸せな時間かということを噛み締め、感謝の気持ちを胸に演奏させて頂きました。

久しぶりにソロをホールで演奏させて頂いたことにより、様々なインスピーレションが湧き、今後どのような演奏をしていきたいかということが自分の中で明確になった気がしております。

Q3.この半年、リアルのコンサートがキャンセルになり、学校での先生との対面レッスンもできない。精神的にきつい時もあったと思いますが、ポジティブに捉えられる面もあったかと思います。大変だったこと、一方新たに得たこと等をお聞かせください。

A3. 学校でのレッスン含め、予定されていたことが一気に無くなってしまい、すっかり意気消沈しておりましたが、先生とオンラインでお話をしたりして勇気づけられたり、これまで取り組んでみたいと思いながらも演奏機会が無かった新しい楽曲に向かい合う時間が取れたり、なかなかゆっくり聴くことが出来ていなかった音楽を聴けたりと、必ずしもネガティブなことだけではなかったと思っております。

Q4.コロナ禍の今、コンサートの画像配信、インターネットを通じての先生とのレッスン、リモートコンサート等、新しい形態での演奏が余儀なくされていますが、今回のリアルのコンサートではアーティストの躍動感や生の音の響きを感じることができ、やはり何百年と続いてきたリアルのコンサートは絶対になくならない!と思いましたが、いかがでしょうか。

A4. 仰るように動画などでの配信などが急速に増えたこの数ヶ月ですが、同じ空間に居合わせて音楽を共有するということはやはり何物にも代え難い特別なことだと私は信じて疑いませんし、今回このような状況を経験した(している)中で、その思いをより強くしました。

Q5.この日の演奏で体重が2キロ近く落ちたそうですね。確かに演奏を聴きながら、ピアニストには体力も必要そうだなと思っていましたが、日頃から体力維持のために何かされていることはありますか。

A5. このコロナ禍を受けて、運動不足に陥りやすいので、最近は昔好きだった縄跳びをしております。これが体力をつけることに貢献しているのかは分かりませんが…。

Q6.阪田さんは、ピアノ演奏だけではなく編曲や作曲にも力を入れていらっしゃいます。この日も素晴らしいピアニストが編曲された曲をたくさん演奏されました。また、ご自身が編曲された曲を自ら演奏しCDに収録されています。作曲や編曲を通じて「ピアノ演奏の新たな可能性を探求している」と当財団の自己紹介でも書いていらっしゃいます。この方向性で手応えをつかんでいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。

A6.  ピアノ曲は有名な作曲家による作品だけでも、一生かけて演奏しきれないほどの数がありますが、そうだからといってピアノ演奏の可能性が出尽くされているかと言われるとそうではないと思っております。偉大なピアニスト兼作曲家の方々に倣って、私も様々な作品をピアノ用に編曲などしておりますが、筆を動かして考えているとそのアイディアを演奏に活かせるのではと気づくことも多いですし、楽譜の読み方も変わってきます。

私はこれまでピアノソロの作品の作曲は、敢えて避けていたのですが、ようやく長く考えていた構想が固まってきたので、形にする時なのかなと思っております。

阪田さん直筆の楽譜

Q7.先を見通せない時代とも言われますが、5年後、10年後はどんな自分になっていたいと考えていますか。

A7. 時代や環境の逆境に負けず、演奏や作曲編曲活動を通して、私が大切にしているクラシック音楽に貢献できるような音楽家でありたいと思っております。

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戦前は3部構成のプログラムが主流で、今回のプログラムはその失われた伝統をお客様に提示するためにプログラミングしたとのこと。勉強になりました!

久し振りのリアルのコンサートで様々なインスピーレションが湧き、今後どのような演奏をしていきたいかも明確になったとのこと。また、ピアノソロ作品の作曲も構想が固まってきたとのこと。どんな曲を聴かせてもらえるのか楽しみです。どんな状況でも進化し続ける阪田さん。今後の阪田さんの更なる飛躍を期待しています♫