2025/04/30

無伴奏ヴァイオリン・リサイタル~イザイに挑む│外村理紗

2025/04/30

外村理紗

外村 理紗 Risa Hokamura

小さい頃から音楽が身近にあった私にとって、ヴァイオリンを始めることは自然なことでしたし、ヴァイオリンと共に成長してきました。逆にあまりに当たり前なことだっただけに中学生時には、自分が将来ヴァイオリンを弾いている姿が想像で…

無伴奏の全曲演奏会をいつかやりたい、という外村さんの長年の夢がかなった演奏を生で聴くことができました。イザイの複雑な奥深い音楽と外村さんの高度な演奏技術に、最初から最後まで驚きの連続でした。初めてイザイを聴いた時の衝撃を今でも忘れられないという外村さん。その衝撃が聴き手にも伝わってくるような演奏でした。

長年ずっと目標としてきた演奏会のこと、大きな飛躍のきっかけとなったニューヨーク留学のことなど、たくさんの質問に丁寧に答えてくれました。

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Q1.
 イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を大きな目標に置いた理由は何でしょうか。いつ頃目標を設定して、どんな準備をしてきましたか?

数年前から、無伴奏の全曲演奏会をされる先輩方をみて、いつか自分も挑戦してみたいなという思いがありました。4年前、師匠の原田幸一郎先生にご飯に連れて行っていただいた時に、「無伴奏の全曲演奏会をやってみたら?」と言って頂き、漠然とした夢が具体的な目標になりました。無伴奏の曲といえば、バッハやパガニーニなどもありますが、中学3年生の時に初めて弾いて凄くしっくりきた記憶があったイザイを選びました。イザイなら、今の自分を自然体で思いっきり表現できると思ったのです。

2022年の終わり頃に演奏会を行う事を決め、2024年初めに開催を計画し、一生懸命準備を進めていましたが、直前で体調を崩してしまいました。あの時の悔しと申し訳なさは言葉では言い表せません。

かなり落ち込みましたが、「何か意味があって、ここで更に一年準備期間を頂けたんだ!」と気持ちを切り替えて、左手の構え方、弓の持ち方、身体の重心の置き方、毎日の練習の仕方など、基礎に戻って徹底的に見直しました。また、ジュリアードでイザイの研究をなさったレイ・イワズミさんにお願いしてzoomでレクチャーして頂き、イザイの人物像や音楽への向き合い方、各曲がかかれた背景などを学び、より一層理解を深めることができました。

@sotaro goto

 Q2. 演奏会では、著名な音楽家の方々が大勢観客席に座り、メディアにも取り上げられましたが、プレッシャーを感じたりしましたか?

たくさんの憧れの素晴らしい音楽家の方々にご来場いただけて、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。もちろん音楽家の方々が客席にいると思うと緊張しますが、それ以上に「紀尾井ホールという大舞台に1人で立ってイザイを全曲弾く」という事実の方が何倍もプレッシャーでした。

メディアに取り上げて頂いたことに関しては、もっとたくさんの方に演奏会のことを知って頂ける!と嬉しい気持ちの方が強かったです。

@sotaro goto

Q3. 長年の夢であった演奏会が終わった今、何を感じていいますか?

達成感半分、終わってしまったことへの寂しさ半分です。数年後にまたイザイ全曲にチャレンジできたらいいなと思っています。とにかく今この時期に、この演奏会をやる事ができて本当に良かったです。この挑戦が、音楽家としても1人の人間としても、私を大きく成長させてくれたと思います。 

Q4. 大きな目標を達成した今、次の目標について考えていますか?

2年後に紀尾井ホールでまた自主公演をやると決めました。まだ具体的な内容は決められていませんが、どうぞお楽しみに🙂 

Q5. 自分の音楽活動の中で、これだけは譲れない一番大事なものは何でしょうか。

どんな時も真剣に、全力で音楽と向き合う事です。

曲の準備期間は、あればある程が良いですが、演奏活動をしていると演奏会がたくさん重なることもあって、必然的に準備期間が短くなってしまうこともあります。焦ると技術的な事に意識がいってしまいがちですが、そんな時は自分を省みるようにしています。

練習する時は、「ここはどんな場面だろう、どんな背景があってどんな感情がこもっているんだろう?」「それを再現するにはどんな指遣い、弓順、ビブラート、音程感、フレージングで弾いたら良いんだろう?」とトライアンドエラーを繰り返して作曲家と対話するように音楽への理解を深めていくプロセスが好きです。

そして舞台では何も考えず最初の音から最後の音まで音楽に没頭する事が理想です。 

Q6. ニューヨークでの留学生活は間違いなく外村さんを大きく成長させたと思いますが、ご自分ではどのように感じていますか?外村さんにどんな影響を与えたと思いますか?

ニューヨークはとても面白い街です。良い所も悪い所もありますが、個性溢れる人達が、各々のペースでエネルギッシュに生きていて好きです。

留学前は自分の好き嫌いや考えなどがあまりはっきりしていませんでしたが、ディスカッションが多いこの国で、自分の考えを整理して言語化することや、常に自分の考えをアップデートする意識を学べたと思います。

また、以前は良くも悪くも完璧主義のような所があったのですが、師匠のロバート先生に「パーフェクトな演奏」というものは存在しない!と教えて頂いてからは、その呪縛から解放されたような感覚があります。前はヴァイオリンが人生の軸になっていて「ヴァイオリンがないと私じゃない」などと思っていましたが、今は人生のパートナーのような感覚に変わってきて、ヴァイオリンとの付き合い方が徐々に健康的になってきたんじゃないかと思います。

マンハッタン音楽学校のマスタークラスでミハエラ・マルティン先生と

Q7. 20年ヴァイオリンを弾いてきました、と言う言葉を見ましたが、まだ24歳。これまで困難にぶつかることもあったと思いますが、外村さんを支えてきたものは何だったのでしょうか?

やはり単純に音楽が好きだと言う事だと思います。音楽に救われたことはもちろん、悩まされたこともたくさんありますが、20年間音楽が好きと言う気持ちだけは変わりませんでした。 

Q8. リラックスできる時はどんな時ですか?ヴァイオリン以外ではまっていることはありますか?

私は飲み物が凄く好きなので、良さげなカフェを見つけるとついついお財布の紐が緩んでしまいます。笑 あと最近はクロスサムやソリティアを移動時間にするのが好きです。

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外村さんの回答を読んでいると、ニューヨーク留学や、大きな困難を乗り越えてイザイの無伴奏全曲演奏会のを成功させたここ数年の経験が、外村さんを一回りも二回りも大きく成長させたように感じます。そんな外村さんの挑戦は終わることはなく、既に前を向いているようです。これからどんな挑戦を目指すのか、どのように大きく世界に羽ばたいていくのか、目が離せません。

外村理紗

日時:2025年03月07日 19:00
会場:日本製鉄紀尾井ホール

◆プログラム
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ op. 27
第1番 ト短調
第2番 イ短調
 ◆◆◆
第3番 ニ短調「バラード」
第4番 ホ短調
 ◆◆◆
第5番 ト長調
第6番 ホ長調