トップページ > 奨学生活動レポート > 東條一輝

奨学生活動レポート

academic

2022.03
東條 一輝 Kazuki Tojo
>プロフィールはこちら

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

現在の夢は、宇宙産業を通じて何らかの開発ミッションに携わり、人類の発展に貢献することです。私は物心ついた頃から輸送機器、中でも特に飛行機が大好きでした。家庭の事情で海外に住んでいたため移動手段の1つではありましたが、どんな旅であっても、飛行機に乗ること自体が一番の楽しみでした。フライトシミュレーターにはまり、漠然と抱いていた「飛行機に関わる仕事をしたい」という夢や好奇心が次第に輸送機の裏側である科学や工学へ、そして宇宙へと広がっていきました。無意識に昼間は空を見上げ飛行機を探し、夜は星や衛星を眺めています。

進学先を決めた当時は身近に宇宙空間を感じる機会がなかったこともあり、最も身近だった環境問題を改善できるよう、エネルギー効率の高い航空機の開発を目標にしていました。イギリス、オランダ、日本の大学など世界中の大学を調べた上で、航空宇宙産業界から膨大な研究資金や環境が提供されるという欧米の大学に絞り込み、最終的には、教育がUndergraduateにフォーカスされており、Residential College system, Precept systemなど、教授とより親密な関係を築いて学びを得ることができること、またリベラルアーツカレッジでありながら、同時に専門性を追求できる環境が用意されていることなどから、プリンストン大学への進学を決めました。

結果、自分にとって夢を達成するための最良の場所だったと実感しています。大学の授業やアメリカ渡航後の日常生活で宇宙関連の情報に触れる機会が多くなったことから、宇宙産業への魅力に気づき目標を宇宙へと変えることになりましたが、2年目の今、NASAのミッションを任されている教授の手伝いをするなど、貴重な機会を得ることができています。そして分野問わず、非常に有能で魅力的な仲間と密接な関係を築くことができています。幅広い知識と幅広い人脈は、自分の夢の達成だけでなく予測不可能な時代変化に対応するためにも、非常に重要な要素だと考えているからです。

マコマス教授研究コースにて (授業風景)

1年前、NASAの探査車パーサヴィアランスが火星に降り立ちました。10年以上費やしたミッションの運命がこの着陸の一瞬にかかっており、着陸成功後、ミッションに関わる人々が成功を喜び合う姿を目のあたりにしました。宇宙産業を通じて人類の発展に貢献するという自分の夢が何であるかを実感した、忘れられない出来事の1つです。自分もいつかこのような経験をしたい、強くそう思っています。

――日常生活、生活環境について

プリンストン大学入学当初からコロナウイルスの影響で、状況は常に不安定で流動的ではあります。しかしながら、渡航直前にオンライン授業へ変更となり急遽1人暮らしを余儀なくされた1年目の秋学期を除いては、プリンストン大学の寮に住み、大学のキャンパスで授業を受けることができています。

Rockefeller Collegeの食堂

平日は授業中心の生活です。午前中に工学の講義が詰まっているため、通常、簡単な朝食で1日を始め、その後専門分野である航空宇宙科学の講義を受けます。昼食後はプリセプト(Preceptorial system) またはラボのいずれかを受けます。プリセプトは、プリンストン大学特有の制度として知られる代表的なもので、少人数クラスで講義中に学んだ概念についてディスカッションをするものです。またラボは、概念的知識を用いて実践しラボレポートを作成するセッションです。そして1日のうちで最も楽しみにしている時間が、夕食です。私の寮にはハリーポッターの映画に出てくるような食堂があり、夕食を楽しむだけでなく、日中は交流ができない友人とくつろぐことも出来る素敵な雰囲気になっています。夕食後は、オーケストラ、サッカー、野球、ロケットクラブなど、現在加入しているクラブ活動いづれかに参加。週末は一日中、復習と宿題、必要に応じて来週の予習などに明け暮れるといった生活を送っています。

Princeton University Sinfonia Orchestra Concert, Fall 2021

 

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること

日々心掛けていることは、改善方法を模索することです。全てにおいて、どうしたら効率よく上達するか、より高いパフォーマンスを発揮することができるかを、常に考えています。個性豊かで魅力的な人々、やりたいと思ったら何にでも挑戦できる環境、この恵まれた機会を逃すことのないよう、1人でも多くの人と知り合い、1つでも多くのことに挑戦をしたいからです。

新たな挑戦や経験を重ねつつバランスのとれた生活を送ることにより、より集中して学業に取り組めるようになる。またその豊かな経験が、自分自身の成長や将来の可能性を広げることにも繋がる、そう考えています。

――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負

昨年夏の宇宙開発民間企業でのインターンシップを経て、現在の目標を定めました。2年目である今年からは航空宇宙工学分野の授業が始まり、春にSpace Generation Fusion Forumへの参加、夏季休暇中は大学教授の下で何らかの研究に関わることを予定しています。また空き時間を利用して、エンジニアとして役立つスキルを身につけていきたいと考えています。

これまで学んできたプログラミング言語、そして特にCADは、設計や計画プロセス以外に、ストレステストや重要な分析作業においても必要不可欠なスキルです。これらを更に高いレベルまで向上させていくと共に、3Dプリンティング技術、レーザー加工技術、ArduinoやPCB(プリント基板)など、1つでも多くのスキルを身につけておくことでエンジニアとしての幅を広げ、激しい時代の変化や技術進歩に対応しつつ、未知の世界へチャレンジできるようにしておきたいからです。

3年目の秋学期からは、オクスフォード大学のエンジニアリング交換留学プログラムへの参加を予定しています。新たな教授や仲間と知り合い、英国の異なるスタイルの教育システムで学ぶことにより、視野を更に広げる大変貴重な経験になると考えています。

最後になりましたが、江副記念リクルート財団の皆様をはじめ、日頃ご支援くださっている全ての方々に心より感謝と御礼を申し上げます。いつか必ず社会に貢献できるよう、精一杯努力してまいります。

東條 一輝 Kazuki Tojo
>プロフィールはこちら