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奨学生活動レポート

academic

2023.01
岩附 莉那 Rina Iwatsuki
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――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?


現在オーストラリア、シドニー大学の獣医学部2年目を終えました。

幼い頃から動物に興味がありましたが、獣医師になりたいと思ったのは小学校2年生の時でした。今でも鮮明に覚えているのが、海外の動物系ドキュメンタリー番組で、ある1人の女性獣医師が重油まみれの野鳥を治療する姿をみて、野生動物の脅かされている状況を初めて知り、心動かされ、獣医師として野生動物の保全に携わりたいと思ったのが一番初めのきっかけでした。


その頃から志は変わることなく、野生傷病鳥獣保護ボランティアを通じて日本の現場を知ったり、獣医師の教授にお話を伺ったり、高校交換留学中に豪州の自然豊かな環境に囲まれた動物病院でのインターン経験や高校2年生の時に参加したアジア・オセアニア高校生フォーラムでの研究/発表を通じて、ワンヘルスの考えのもと獣医師として保全医学の面から生物多様性保全に貢献したいと思うようになりました。


「傷病野生動物を救う臨床と希少種を守る研究を行う獣医師として、生物多様性の保全に貢献し、医師、獣医師、環境保全の専門家が三位一体となって協力し合える社会を作りたい。」


これが私の長期的な夢であり、その実現のために、有袋類を含む多くの固有種を維持し、世界トップレベルの獣医学研究環境を誇るオーストラリアにて修めたいという気持ちが強くなりました。その自然豊かな環境で、実践的な野生動物保全医学、個体レベルから種、環境、人間との関わりを包括的に学び、ワイルドライフヘルスセンターなどの体制が確立され保全医学を強みとする豪州にて、またワイルドライフヘルスセンターの立ち上げに関わる卒業生がいたり、提携する動物園での実習、コアラの管理保護を目的とした研究を行う機関もあることからシドニー大学の学の場に惹かれました。

これまで育ってきた日本での保全体制と高校交換留学でお世話になった豪州と両方の体制を実際にみながら、将来は国際的に貢献できる獣医師になりたいと思っています。

                     キャンパス

――日常生活、生活環境について

私の住むオーストラリア、シドニーは日本と赤道を挟んでちょうど反対にあり、冬は寒過ぎず夏も蒸し暑くなく過ごしやすい街です。移民大国ということもあり、シドニー近郊で生活しているだけでも多文化を感じる機会が多いです。またキャンパスは都心部とはいえ、多様な植物に囲まれた自然豊かな環境で、キャンパス内には様々な種類の鳥や有袋類のポッサムなども目にします。

寮、講義/実験室、図書館が徒歩20分圏内程度で、キャンパス内で全て完結するような生活を送っています。寮は大学が運営しており、中でも13階建ての一番規模の大きいものです。様々なバックグラウンドを持った世界各国からの留学生が住んでおり、同じ専攻以外の同世代と横の繋がりを持て、刺激的で大変グローバルな環境です。キャンパス内には図書館や勉強スペースが充実していて、友達とときたま場所を変えつつ勉強しています。図書館がありがたいことに24時間開いているので、気がつくと夜中まで課題に取り組んでいることもあります。

平日は朝9時頃から夕方まで講義、実験、実習があり、空きコマは図書館で課題や自学習をして過ごします。週によって時間割が異なるので、時間が合えば日本文化ソサエティやダンスソサエティでの活動に参加しています。帰宅してからは夕ご飯を作り、その後寮内の勉強スペースや自分の部屋で授業内で消化しきれなかった内容を復習したり、実習の予習をしたりします。シドニーはとにかく物価が高いので自炊を心がけ、運動不足解消も兼ねて、徒歩で30分程度かかるスーパーへはウォーキングするようにしています。

週末は納得のいくまで課題に専念したりグループワークに取り組むことが多いですが、野生動物救護保全ボランティアの研修や寮内のイベントに参加したり、幼い頃から続けているダンス(ジャズやコンテンポラリー)の外部レッスンに行き気分転換の時間も大切にしています。

私の専門分野特有のことといえば、動物園での実習だと思います。バスでハーバーブリッジをまたはフェリーで海を越えて大学や寮のある側とは反対側にあるタロンガ動物園に2週間に1回程度の頻度で実習に行っていました。多種多様な動物の観察の仕方や生態学的に重要な適応を実際に見て学ぶことができ、また飼育員を含む動物園関係者の方と動物園の種の保存・研究/調査機関としての役割について直接お話を伺ったり議論したりすることができ、毎回学びの多い実りのある実習です。

                   大学内での実習の様子

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること

自分の目標や到達方法の軌道修正を前向きに行うことを日頃から心がけています。

特にコロナ禍で渡豪できず孤独なオンライン期間が1年半も続いたこともあり、自分が思い描いていたことができないもどかしさや右も左もわからない状況での遠隔スタートで精神的に不安定になることもありました。そこで特にこの1年は渡豪できるできないに関わらず、「今自分のある状況から冷静にできることを考え、軌道修正し実行すること」を意識するようにしていました。私は目の前のことに必死になり過ぎてしまうことがあるので、計画に対する進捗確認と改善点の洗い出し、長期的及び短期的目標の見直しを習慣化しています。これを意識的に気をつけるようになってからは、精神的にも成長し、前向きに行動していく力がついてきたと思っています。

夢達成へ向けては今は学部2年生ということもあり、座学も多いですが、中学生の頃から日本の動物保護施設やシェルターで活動し実際にやってみたから行ってこの目で見たからわかったこと、その場の生の声を聞いたからわかったことが多く、同じようにオーストラリアの野生動物保全の実際の現場を知る・肌で感じる経験は大事だと考えています。そのため、動物園実習での生息域外保全の現場を深く観察したり積極的に質問したり、例えば大学内で動物を扱うイベントのスタッフで実際の生き物と関わる機会を得たりというほんの小さなことから外部団体の野生動物救護保全ボランティアになるための研修を持続する(オーストラリアの固有種の見分け方やハンドリング、救護シナリオや手順を学んでいます)など、机上の学だけでは得られないことに取り組む様にしています。

また、私が将来やりたいことは、獣医学だけに留まらず多岐にわたる分野の人との繋がりが大事になってくると考えています。そのため、様々な方向にアンテナを張り、寮内での交流を初め様々なコミュニティで同じ興味を持つ人々以外との交流も心がけています。

――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負

振り返ると2022年は新たな地での生活の立ち上げと学業を両立するのに精一杯でした。

私はこれまでの経験から、学業に加えて興味のある分野での活動やダンスやその他のクラブ活動にも全力を注ぐことで、心身のバランスが取れ、健康的に最大限のパフォーマンスを各方面で発揮できると思っています。2022年後期から渡豪とタイミングの問題で通年で活動しているソサエティ(日本文化ソサエティ、野生動物に関するソサエティ、ダンスソサエティなど)や課外活動になかなか関われない部分もあったので、時間管理をしっかりと行い、2023年から一気に専門性が上がるので、学業面でも生活面でも充実したバランスの取れた生活を引き続き送りつつ、課外活動の幅を広げていけるようにしたいと思っています。目の前のことに丁寧取り組み短期的な結果を出すだけでなく、必死になり過ぎて長期的ビジョンを見失わないよう、常に一つ前で触れた立ち返りを来年も意識していきたいです。

また、現在、野生動物救護保全ボランティアの研修中なので正規ボランティアとしての経験を沢山積むと共にオーストラリアにおける動物衛生サーベイランスシステムの勉強もする予定です。

今後、将来目指す立場として、発信して人を巻き込む力や導く力が課題だと思っています。これまで様々な活動でリーダシップを発揮する場はありましたが、オーストラリアに渡ってからは少ないため、例えば学業と並行して精力的・積極的に課外活動の機会に飛び込むだけでなく、機会を作り出す側になれるようになることがこれから挑戦していきたいことです。

このような学びができるのは、江副記念リクルート財団の皆様をはじめ、日頃から支えてくださる全ての方々のおかげです。

しばらくの間オンラインで遠隔だったものが、渡豪できたからこそ経験できたことばかりで、幼い頃から興味のあった獣医学を国際的な場で勉強できていることに日々感謝の気持ちで一杯です。今後も良い報告ができるよう、社会に貢献できるような人材になれるよう、精一杯精進して参ります。

                   実習先のタロンガ動物園

岩附 莉那 Rina Iwatsuki
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