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奨学生活動レポート

music

2019.10
小林 海都 Kaito Kobayashi

私は日本の高校を卒業した年の夏から渡欧し、留学生活も早くも6年目を迎えました。現在の留学地であるスイスのバーゼルには3年前から滞在していますが、観光しようと思えば一日で街全体を回れるくらいの規模でありながら、学生も多く賑やかな一面も持った素敵な街です。また私の家から徒歩5分以内にはライン川が流れており、通学路として毎日その絵のような素晴らしい景色を眺めたり、時間に余裕のある時には川沿いを散歩したり、ベンチに座ってヨーロッパ特有のゆったりと流れる空間に身を任せたりと息抜きをする良い場所になっています。

またバーゼルはスイスでも国境線の近くに位置しているので、買い物も物価の高いスイスではなく、お隣のドイツにトラムで行くことがほとんどですが、スイスは普通のスーパーでも売られている品質が良いので、パンコーナーで売られているアップルパイやマフィンがすごく美味しく、自分へのご褒美感覚でついつい立ち寄ってしまいます。 年に一度行われるファスナハトと呼ばれる謝肉祭だったり、寒い冬にスイス民謡のヨーデルを聞きながらワインたっぷりのチーズフォンデュを食べたりと、様々な楽しみ方もある国です。

私が通っているバーゼル音楽院は数少ない古楽が盛んな学校としても有名です。ドイツやフランスの都市と比べるとアジア人の学生の数はかなり少なく、カフェテリアなどで聞こえてくる言語はドイツ語や英語の他にスペイン語が多い気がします。私がバーゼル音楽院で師事している先生はスペイン人のクラウディオ・マルティネス・メーナー先生で、この3年間目から鱗のようなレッスンを受け、大きく影響を受けています。私はこれまで師事してきた先生方からは音楽への向き合い方や、音楽の持つ精神という本質的な点を深く刻み込まれるようなレッスンを受けてきましたが、今のレッスンではそれらを踏まえて、プロとして演奏するために必要不可欠な「楽譜の読解力」そして「解釈の多様性」という点において特に影響を受けており、音楽の無限の可能性を感じ、また一生涯追求するだけの価値のある素晴らしい作品を残した偉大な作曲家たちへの尊敬の念が深まる日々です。

日本人である私が西洋音楽が生まれたヨーロッパで生活しているというのは、大変に貴重な経験であり財産です。時代こそは違えど、あの作曲家たちが吸った空気や目にした景色などが身近に感じられる素晴らしさというのを噛み締めて、より彼らの心に少しでも近づけるよう、そして長い歴史とともに受け継がれてきている音楽を多くの方に届けられるよう、日々精進して参ります。