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奨学生活動レポート

academic

2020.06
角南 槙一 Shinichi Sunami

私はオックスフォード大学物理学科の博士課程に所属し、Ultracold Quantum Matter Laboratoryで研究に日々励んでいます。研究テーマは、標準量子限界を超えた精密測定を可能にする量子状態の実現と非平衡量子多体ダイナミクスの観測です。1つ目のテーマは超高精度の重力や時間の測定に役立てることができ、重力波観測などの基礎物理のみならずGPS等の身の回りの技術にも応用できるものです。2つ目のテーマは量子物理学と統計物理学にまたがるもので、時間に関して可逆なふるまいをするはずの量子物理の世界(孤立量子多体系)においてどのようにして時間に関して不可逆に見える統計力学的な現象(熱化)が起こるのか、という疑問に対し実験的な事実で理解を深めようとするものです。

オックスフォードは学科としての区分のほかに30以上ものカレッジという構成単位に分かれており、特に学部生の教育はカレッジを中心に行われます。オックスフォードやケンブリッジの少人数でのきめ細かく質の高い教育はこのカレッジ制度に支えられています。私達大学院生は残念ながら学生としてのカレッジとの関わりは薄いのですが、逆に教える側として学部生への少人数教育を担う機会があります。私も学部生の物理学実験クラスの手伝いをしたり、修士の学生の指導を担当したりしています。

イギリスの大学制度は日本と大きく違い、例えばオックスフォード大学の物理学科では学士課程3年と講義中心の修士過程1年の後に博士課程3-4年(分野により違い、私の所属する学科の場合は3.5年です)が標準カリキュラムです。日本では博士前期(修士)過程と後期課程で5年過ごす場合が多いので、それに比べるとイギリスの博士過程で研究できる期間はやや短いといえます。皆自立心も高く、自学と見て学ぶことで成長し研究者として自立していきます。

普段の時間の過ごし方としては、日中は実験装置につきっきりとなり夜と週末を使って理論計算、データ解析や論文執筆を行います。課外活動として、研究室の同僚と統計物理学のアイデアを学べるVRゲームを作り大学のアウトリーチイベントで小中学生や市民の方に遊んでもらう活動をしています。週末はオックスフォードの広大な自然の中をランニングすることが多いです。

オックスフォードに来てから既に3年目に入り、論文出版を5本経験しさらに自分でアイデアを出して立ち上げたプロジェクトも複数の論文として発表できそうな段階まで来ることができました。このような充実した研究生活を送れていることに対して、財団の皆様に心から感謝しています。さらに成果を出していけるよう精進してまいります。