2025/10/21

スポーツ部門奨学生インタビュー 2025 #1
バスケットボール ジェイコブス晶  

2025/10/21

ジェイコブス 晶

ジェイコブス 晶 Akira Jacobs

身長の高いウイングポジションとして、多才なプレーをすることが目標です。シュート、ドライブ、アシスト、ディフェンスが高いレベルでできるようになりたいです。今の僕の強みは、3ポイントシュートを決めることと、直線的なドライブで…

2024年8月に行われたパリ2024オリンピックで、日本男子バスケットボール日本代表に最年少の20歳で出場した、ジェイコブス晶さん。今春、ハワイ大学からフォーダム大学へのトランスファーを表明。2025年11月から始まるシーズンを前に、現在の思いや目標についてお話を伺いました。


ーまず最初に、バスケットボールを始めたきっかけについて教えていただけますか?

日本で生まれましたが、育ちはカリフォルニアのロサンゼルスでした 。どこに行ってもバスケットボールができる環境で、テレビでもいつも試合が放送されていましたし、近くにはコートもありました。小さい頃からずっとバスケが身近にあったので、自然とやるだろうという感じでしたね 。自分自身はあまり覚えていないのですが 、4、5歳ぐらいの時に母がYMCAの子供用バスケットボールリーグに入れてくれたのが始まりだと聞いています。

ロサンゼルス時代のジェイコブス晶さん

ー気づいたらもうやっていた、という感じだったのですね 。最初から上手でしたか? ?

ずっと体が大きい方だったので、バスケはうまい方でした 。ずば抜けてレベルが違うというほどではなかったですけど、どこへ行ってもいい活躍はしていました 。

ー新型コロナウイルスの影響で高校がロックアウト、その際に練習環境を探し、Bリーグのプロバスケットボールチーム横浜ビー・コルセアーズに加入しましたね。これは、ジェイコブスさんのキャリアの中で大きな変化でしたか?

たぶん一番大きな変化だと思います 。アメリカでの高校バスケはそこまでレベルが高くなかったですし、専門的なトレーニングもしていなくて半分バスケをやっているという状態でした 。新型コロナウイルスの時、「このままでは大学へ行けるぐらいの活躍ができない」と焦り、もっとやらなきゃいけないと感じました 。そのタイミングで日本に戻ってプロバスケットボールチームに入ったのは、自分にとって本当に大きな飛躍でした。もともとの才能もあったと思いますが、何より努力をしっかり積み重ねられたことが大きく、この時点で自分が大きく変わったと感じます。

コロナがなかったら、自分はどうなっていたんだろうと思います。きっと日本に引っ越すこともなかったでしょう。世界的には大変な状況でしたが、自分の人生のストーリーにとっては、とても大きな意味のある出来事だったと思います。


ー ロサンゼルスで16歳まで過ごし、そこからBリーグ史上最年少17歳で日本のプロチームに加入するというのは環境面でも大変だったのではないですか?

最初の1年はすごく大変でした 。環境の変化もありますが、アメリカの高校にはまだ在籍していて、全部オンライン授業だったんです 。アメリカの時間で学校があったので、夜中から授業に出て、少し仮眠をして、午前中から夕方まで横浜ビー・コルセアーズトップチームの練習。その後、少し寝てからU18の練習、というスケジュールを数ヶ月続けていました。(※当時はU18とトップチームを兼任)
今考えると、どうやってやったんだろうと思いますが、その大変なスケジュールと慣れない環境の中で、日本語も上達したと思うし、いろんなことですごく成長できたと思います 。

横浜ビー・コルセアーズ時代

ー 日本のプロチームや代表と、ハワイ大学やフォーダム大学などアメリカの大学では、練習環境に大きな違いはありますか

大学では勉強とバスケットボールを両立しながらやっているので、どうしても練習できる時間が限られています。その分、練習のときはしっかり時間を取って、長時間取り組むことが多いですね。一方、プロチームや代表の練習は、より短時間で、細かい部分を集中的にやることが多いです。限られた時間の中で集中して質を高めていく、という違いがあります。

ー なるほど。大学の方が練習時間が長いんですね。

そうですね。大学は授業など他にやることも多い分、練習できるときにはしっかり時間を取ります。プロや代表チームは専用の施設があって、選手が自分のタイミングで個人練習をできる環境が整っています。だからチーム練習自体は長時間行う必要がないんです。また、プロの選手はそれぞれ自分のやるべきことを理解していますし、シーズン中は試合も多いので、3〜4時間も練習してしまうと体に負担がかかってしまうんですよ。

ー今シーズンからNCAAディビジョン1のフォーダム大学にトランスファーしました。強豪が揃うアトランティック10カンファレンスの中で、どのような役割を担っていきたいと考えていますか?

自分のバスケットをしっかり見せたいという気持ちは変わりません。フォーダム大学はA10の歴史の中でも強豪とは言えず、シーズン前のランキングでも下位に見られることが多いんです。 「期待されていない」「勝てない」と思われている環境が、逆に自分たちのモチベーションになっています。
誰も信じてくれない中でも、自分たちは本気で努力している。そういう気持ちでチーム全員が取り組んでいるので、プレッシャーはあまり感じません。むしろ、自分のスタイルを思い切り出せるチャンスだと思っています。


フォーダム大学での練習の様子

ー 今後、プロへのキャリアをステップアップさせるために、今年の1年はどのようなことに取り組もうと思っていますか?

一番大きな目標は、ペイントエリア(ゴール下付近)でのシュートの精度を上げることです。自分のサイズを生かして、インサイドでもしっかり得点を取れるようになりたいと思っています。これまでの2年間や代表チームでは、主に3ポイントシューターとしてプレーすることが多かったんですが、3ポイントはもう打てる選手だとみんなが分かっているので、確率をさらに上げつつ、ペイント内での得点とのバランスも取れるようにしたいです。

ー 日本代表として、パリ2024オリンピックやアジアカップに出場し、世界のトップ選手たちと対戦しています。その中で、自分が「通用する」と感じた部分と、「まだこれから」と感じた部分を教えてください。

通用すると思ったのは、自分のプレースタイルがすごくシンプルなところです。カット、シュート、ドライブといった基本的なプレーは、どのレベルでも通用すると思いました。あとは、それをどれだけの精度で、どれだけやりきれるか。結局は自分の意識と行動次第だと思っています。
逆に、通用しないと感じたのはディフェンス面ですね。特にフィジカルの部分で、相手に押し負けるシーンがまだ多いです。体重や力の差、そして守り方の細かい部分も含めて、まだ足りないと感じています。それは大学でも代表でも同じです。




ー フィジカルを強化するために、今はどんなことに取り組んでいますか?

体重を増やすことと、筋力を上げることに取り組んでいます。フィジカルが強くなれば、ディフェンスもオフェンスも両方でプレーの幅が広がると思うんです。ペイント内でしっかりシュートを決められるようになりますし、ディフェンスではポストの守備でも当たり負けしなくなる。なので今は、その部分を一番意識して強化しています。


ー ジェイコブス選手のように、日本代表で活躍したい、また、アメリカの強豪大学からNBAを目指したいと考えている中高生アスリートへメッセージをお願いします。

僕はいつも自分自身に言っていることですが、自信を持つこと。 自信がないと、何も前に進めないと思っています。でも、その自信は努力して初めて生まれるものです。 僕は試合のとき、あまり緊張しないんです。 それは、それだけ練習を積んできたという自信があるから。もしその試合でうまくいかなくても、「次のチャンスで絶対に活躍できる」と信じています。そうやって努力を続けていけば、自然と自信もメンタルも強くなっていくと思います。もちろん、全てがうまくいくわけではありません。 でも、結果が良くても悪くても、自分の努力を続けることが一番大事です。 このスポーツが好きだという気持ちを大切にして、うまくいかない時も、それも自分のストーリーの一部なんだと受け入れて、努力を続けてほしいです。



◆2026年度スポーツ部門奨学生募集要項 (募集期間:2025年9月15日~11月17日)
https://www.recruit-foundation.org/scholarship/sports2026

プロフィール
ジェイコブス晶
2004年 神奈川県横浜市生まれ
2018年 Adams Middle School 卒業
2022年  東京インターハイスクール 卒業
2023年 ハワイ大学マノア校
2025年 フォーダム大学

江副記念リクルート財団ホームページ