2022/08/09

アートの美しさは解釈の幅の広さ。アートが日常生活に溢れるように。│百目鬼拓斗

2022/08/09

百目鬼拓斗

百目鬼 拓斗 Takuto Domeki

現代社会におけるコミュニケーションは、以前とは大きく様変わりしています。近代主義者の未来感における希望的観測とポストモダンの皮肉なシニシズムが同居する現代社会で、それらが混ざり合う事で、ポストモダンアートのその先、の時代…

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

――将来の夢、そしてその夢や現在の学びの場所を目指したきっかけは?

私の今の将来の夢は(ちょっと抽象的かもしれませんが)、アートがより身近で、誰でも容易にアクセス可能なものになるような世の中にすることです。世間一般的に、そして大学の私の身の回りにいる芸術に携わる人たちでさえも、アート(芸術)とは一部の選ばれたエリートのためのものであったり、難解で上品ぶったものと思っているようです。しかし、私にとっては、アートの美しさは解釈の幅の広さにあり、それを解釈する人が増えれば増えるほど、そこから面白い発想が生まれると思うのです。ユーモアや率直さといったものは、グラフィックデザインの分野では出てきますが、純粋美術の分野ではあまり表現されません。逆に情緒とか人間性というのは、純粋美術ではよく扱われるが、グラフィックデザインではあまり取り上げられない。しかし、それら両方とも全て人間の本質であり、平等に扱われるべきものです。そして、それらが同等に扱われたとき、芸術や文化に対する人々の、新たな包括的な理解が生まれると思います。クーパーユニオンに来て、私はグラフィックデザインという”ジャンル”の”芸術”が好きになりました。自分がまさかグラフィクデザインに興味を持つなどとは、今まで思っていなかったのですが、今まさにグラフィックデザインと私たちが呼ぶ”アート(芸術)”が日々の生活の様々な場面で自分たちを囲んでいる事を実感しています。”アート”の定義が広くなることで、より多くの人が気軽に”アート”に興味を持ち、”アート”がもっと私たちの日常生活に溢れるようになれば良いなと思います。

――日常生活、生活環境について

私は現在、スタジオクラス4クラス、ゼミクラス1クラス、そしてリベラルクラス2クラスのそれぞれに在籍しています。スタジオクラスとは、主にアートに関する実技を中心とした授業のことです。私が在籍しているスタジオクラスは、主にアドバンストデザインのクラスです。正直なところ、私はアート以外の座学のクラスがあまり好きではありません。しかし、卒業するためにはリベラルアート系のクラス(実技ではなく、人文・社会科学系)を取らなければいけません。自分が得意でない事もあり、それらの授業にはあまり期待をしていなかったのですが、、クーパーユニオンには素晴らしい教授が沢山いて、今まであまり考えなかった、興味の無かったテーマについてもっと学びたいと思わせてくれるのです。今年はレジデンシャルアドバイザー(学生寮の寮長的ポジション)の面接に合格し、学生寮に住むことになりました。どんな後輩たちに会えるのかワクワクしますし、キャンパスやスタジオへのアクセスも良くなり、街にも近くなるので、とても楽しみです。

学校からの景色
学校のスタジオ
アパートからの景色

 

――夢の達成に向けて、日々取り組んでいることや気を付けていること

最近自分自身で気が付いたのは、「展覧会を開く」、「雑誌を作る」など、自分が決めた目標を達成する事に固執しすぎる癖がある事、そしてそれが自分を知らない間に精神的に追い詰め、創作意欲や想像力にも悪い影響を与えている事がある、という事です。目標は自分の進むべき指標を定めるには良いのですが、その目標を達成するためには時間掛かります。計画通りに行かない、一朝一夕に片付かない事に対してストレスを溜めない心持が必要だと思います。加えて、遠くの目標に向かって漠然と努力するよりも、自分のスキルや習慣を向上させるなど、より実際的、現実的なゴールを設定し重点を置く事も、自分には必要だと感じています。自分が今まで触れたことのないメディア、分野で面白いアイデアを考え付いた時、上手くそれを表現する事が出来ない敗北感を味わうことがあります。3Dソフトやプログラミング、オーディオ制作など、アートの実技だけに囚われず、自分のアイデアを表現するための幅広いスキルを身につけることに取り組んでいます。より多くのスキルを身につければ、より様々な表現方法で、より多くの人にアプローチでき、彼らのアートに対する概念を変え、インスピレーションを与えることができるかもしれないと考えるからです。

――これから更に挑戦したいことや、1年間の抱負

私は子供の頃から安全志向が強く、失敗を恐れてリスクを取ることがあまりありませんでした。でも、それを克服するために、もっと挑戦していきたいと思っています。その一環として、上に書いたように様々な媒体(音、彫刻、文章)、様々なツール/ソフトウェア(3D、アニメーション、プログラミング)などのスキルアップに挑戦し、1年後には、ぜひ大規模なプロジェクトを行いたいと思っています。展覧会でもイベントでもいいのですが、最近行ったプロジェクトは規模が小さかったので、本当に大きなものをやりたいと思っています。