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第43回生 山口 茜│卒業インタビュー

約9年間の財団期間中、常に世界の最前線で活躍し続けた第43回生 山口 茜さん。彼女の強さの秘訣とは、そして彼女にとってバドミントンとは?2021年3月の財団卒業を控えた山口さんに、他部門奨学生がインタビューを実施しました。

インタビューに際して、過去の試合の動画を拝見しました。数々のスーパープレーの中でも特に痺れたのが、今年(2022年)3月に行われ、見事優勝された全英オープン決勝の2セット目でのプレーです。まるで山口さんが得点することが決まっていたかのような完璧なプレーは、ネットぎわからの強烈なスマッシュ。さらに、1つ前の得点と同じ場所へのスマッシュで、山口さんの勝負強さ、心の強さを感じました。どの試合も、山口さんの一挙一動に歓声と拍手が送られ、まるで山口さんとシャトルが繋がっているかのような美しい放物線が描かれます。山口さんのプレーの根底にはどのような思いがあるのか、迫っていきたいです。

【インタビュアー:学術部門48回生 筧 路加

米国ペンシルベニア大学所属。化学を専攻し、栄養学を副専攻として学ぶ。今年の夏まで休学し、日本で培養肉を研究する傍ら、スポーツ栄養学の資格を取得。東京オリンピックでは、ボランティアとして近代五種を担当した。


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全英オープン、そして東京オリンピックは、山口 茜さんにとってどのような大会でしたか?

山口:東京オリンピックは、負けてしまって悔しいとか、期待に応えることができなくて悔しいという思いがどうしても一番に出てくる大会になってしまったと思っています。ただ、普段とはなかなか違う雰囲気があったり、コロナ禍での開催であったり、人生に一回来るか来ないかもわからない自国開催でのオリンピックを経験できたことはすごくよかったですし、試合ができる幸せを改めて感じられた大会になりました。全英オープンやオリンピック後の大会は、オリンピックで感じた悔しさをぶつけられているんじゃないかなと思います。


ーー競技生活をされる中で信念として持たれている思いや、これだけは譲れないメンタルでのこだわりや強みはありますか?

写真:43回生 山口 茜さん

山口:「楽しむ」というのは、本当に一番大切にしています。勝負の世界なので、どうしても結果が全てというところはあるのですが、自分はそれ以上に勝負というより競技自体を楽しみたいという思いが強いです。結果を残すことによって期待に応えられる嬉しさもあるとは思うのですが、現役生活を終えた後にもバドミントンを楽しみたいなと思っていますし、一生好きでいたいです。なのでその思いが壊れないように、「楽しい」「好き」っていう気持ちはずっと無くさないようにやれたらなぁと思っています。

ーー山口さんの多彩で独創的なプレースタイルは、どのようにして獲得されましたか?

山口:小さい頃から、一定の選手に憧れを持ったりお手本にしたりすることがあまりありませんでした。色々な人のプレーをみて、自分が真似したいと思ったらすぐに真似してみたりとか、あとは自分のイメージの中でやってみたいと思ったプレーをすぐに実践してみたりとか。そういうふうに遊びから入ったり、好奇心からプレーに取り入れていったりすることが多かったのかなと思います。多彩と言われるとすごい嬉しいんですけど、そういうプレーは好奇心から生まれることが多いですね。

ーー まさに楽しむことの延長線上にあるんですね!試合を決める一手はどのように決められていますか?

山口:難しいですけど、試合の流れや会場の環境、空調の影響でシャトルの飛び具合が変わることもあるので、その場に合わせたプレースタイルが1番重要かなと思います。同じところにスマッシュを打つのか、それとも対応され始めたら逆サイドに打つのかなど、試合の中で積み重ねてきたものを大切にすることが多いですかね。

写真:48回生 筧 路加さん

ーー多くの試合を経験された中で、自分自身が一番成長できたと感じた部分や、またその時期があれば教えてください。

山口:色々なことをバドミントンを通して学んできましたが、特に社会人になってから、人としても選手としても成長する機会が増え、周りのサポートのありがたみをより感じるようになりました。バドミントンは対戦相手や練習相手が必要で、1人ではできないスポーツです。試合をするにも、審判の方だったりコートの設営だったり、本当にいろんな方の協力が必要で、大会などでその裏側を目にする機会もだんだん増えて来ました。周りの人にどのような気持ちでサポートや応援をしていただいているのか、色々な人の思いを感じながら、それを精一杯のプレーで返していこうと思えるようになったことが、自分の中では成長なのかなぁと思います。

ーーコーチや仲間からかけられた、印象的な言葉やエピソードはありますか?

山口:色々な方、小学生の時のコーチや中学高校の時の顧問の先生だったり、実業団になってからも、「自分らしくやれ」って言われることが多いです。あれこれ言われるわけではなくて、自分らしくやったらいいんじゃないって言われることが多いので、それはそのまま受け取って、自分なりにやれたらいいなと思います。逆を言えば、自分で考えてやらないといけないとも思いますが、あれこれ縛られず、プレースタイルも自由にできているのは、そういうふうに皆さんから言ってもらえているからなんじゃないかなと思います。

【インタビューを終えて…】

インタビューの最後に、「好きなことに取り組んでいても辛くなる時期はあるかもしれませんが、周りのサポートに頼りながら、楽しく活動してもらえたらと思います。」というお言葉を、財団生へのメッセージとして頂きました。インタビューを通して「楽しむ」ことへの思いを教えていただきましたが、私には想像もつかないような裏での数々の努力があるからこそ、楽しむことが出来る環境を創り出されているのだと感じた瞬間でした。

質問一つ一つに丁寧に言葉を紡いでくださった山口選手。きっと、周りにいる人誰もが自然に応援したくなる選手なのだと思います。財団はご卒業されますが、これからも変わらず応援し続けます! 
(取材日:2022年3月24日 文:学術部門 筧 路加 )


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