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辻彩奈さん
(ヴァイオリン)

辻彩奈 アルゲリッチ&フレンズ
イヴリー・ギトリスへのオマージュ

2022.6.3(金) 19:00
すみだトリフォニーホール

◆プログラム
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
  辻彩奈(ヴァイオリン)/ マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
バガニーニ:カプリース op.1から第24番 
  辻彩奈(ヴァイオリン)
ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲
  酒井茜 / マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
クライスラー:愛の悲しみ
  辻彩奈(ヴァイオリン)/ マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
クライスラー(ラフマニノフ編):愛の悲しみ
シュピルマン:マズルカ ヘ短調
シマノフスキ:マズルカ op.50から 第10番
  酒井茜(ピアノ)

2022年6月3日(金)、辻さんが「24年の人生においてのビックイベント!」と呼ぶコンサートがありました。ピアニストのマルタ・アルゲリッチさんとの共演です。辻さんは大好きなフランクのソナタを演奏されました。

辻さんが「忘れられない、かけがえのない経験」というこのコンサートについてもっとお聞きしたく、質問に答えていただきました。

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Q1.フランクのヴァイオリン・ソナタの演奏後、大きな拍手が鳴りやまなかったですね。ご自分ではどんなことを感じていましたか?
 

幻のようなかけがえのない経験でした。今思い出しても、ただただすごい時間だったなと。マルタさんと、しかも大好きなフランクを弾けるなんて、お話をいただいた時は信じられなかったですし、実際にリハーサルで彼女と会うまで、やっぱり信じられませんでした()。でも、本当に本当に素晴らしい時間でした。宝物です。 

Q2.アルゲリッチさんのピアノは包容力があり、やさしくて、自然と共演者からベストの演奏を引き出すような演奏のように感じましたが、アルゲリッチさんの演奏の印象はいかがでしたか? 

リハーサルでも本番でも、とにかくあなたはどう思ってる?と私が弾いていて快適か(適切な言葉が見つかりませんが…)、すごく気にしてくれていたのが印象的でした。そしてなんと言っても、彼女のどこまでも続いていくような美しい弱音に感動しました。一番近くであんなに繊細な美しい音を味わえたこと、贅沢すぎました。

あんなに大きなホールでたくさんの方々の前でソナタを弾くのも初めてでしたが、普段超緊張しいの私が全く緊張しませんでした。きっとどんな風に弾いてもマルタさんは必ず一緒に音楽をしてくれると思っていたし、最強のピアニストが私と一緒に弾いてくれる!と思ったら、緊張よりも楽しみ、の方が強かったです。
 

Q3.今回の共演で得たものは大きかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか? 

自分自身のフランクの解釈も、今回でかなり変わりましたね。音の出し方も意識して変えました。 

Q4.今回の演奏会は、イヴリー・ギトリスさんへのオマージュとのことですが、プログラムにはイヴリーさんとのツーショットも載っていますね。2020年12月24日に98歳で亡くなったそうですが、辻さんはいつ、どこでイヴリーさんとお会いになったのですか?
どのような印象をお持ちですか? 

2017年の5月、別府のアルゲリッチ音楽祭にて、イヴリーさんのマスタークラスがありました。私は受講生で、そこでお会いしました。

小学生の頃、彼の若い頃の演奏のDVDを毎日のように聴いていたので、お会いできてとても嬉しかったですね。

マスタークラスではイザイのソナタを聴いていただきましたが、たくさん褒めてくださって、その後バッハのシャコンヌを聴いていただきました。バッハのシャコンヌの時、シャコンヌの音楽から「人生」についてお話ししてくださったのが今でも心に残っています。

とてもお優しい方で、マスタークラスの時もその後コンサートに伺った時もいつも笑顔で、明るくチャーミングな方でした。素敵な思い出です。 




Q5.今年も新学期が始まりましたが、今年の具体的な目標を何か定めていますか?

 昨年は代役のお話をいただいたこともあり、とにかくたくさんのコンチェルトを弾きました。1年で24回のコンチェルトを弾いていたので、コンチェルトのレパートリーもかなり増えましたし、短期間で仕上げる力もついたかなと思います。

今年はリサイタルに力を入れる年です。室内楽の勉強をたくさんしたいですね。
7月の阪田知樹さんとのリサイタルツアーもそうですし、積極的に新レパートリーを取り入れています。

今年は同世代から尊敬する先輩方まで、幅広い世代や様々な楽器の方と室内楽をさせていただく機会に恵まれています。音楽的にはもちろんですが、たくさんの音楽家の方と接すると、人間的に学ぶこともたくさんあります。
 

Q6.以前、緊張やストレスのコントロール法についてお話されていましたが、いい方法を見つけましたか?コントロールできるようになってきましたか? 

昨年の初めごろ、異常な緊張で舞台に立つことが怖くなってしまった時期が少しありました。今ではだいぶ克服して、緊張を受け入れられるようになってきたかなと思います。 

突然不安になったり、自分を信じられなくなったり、いろんなことがありますが、そんな時に話を聞いてくれたり温かい言葉をかけてくれたりする先輩たちがたくさんいて、私は幸せ者だなと思っています。

少し前、人としてとても尊敬している音楽家の方から、「あなたの個性を大事にね」という言葉をいただいたことがありました。胸のつかえがスッと取れた気がして、ずっとその言葉を大事にしています。簡単な言葉ですが、誰でも言える言葉ではありません。

音楽はもちろんですが、1人の人間として、これからもずっと成長し続けていきたいなと思っています。

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1年に24回コンチェルトを弾き、マルタ・アルゲリッチさんとの共演を経験し、夏にはツアーに出る。そして、緊張をコントロールできるような、胸のつかえが取れるような大切な言葉をもらった。

たくさんの貴重な経験を積み、人に恵まれ、困難を少しずつ乗り越えていく。そして、どんどん大きくなっていく辻さんを近くで見ることができるのは、本当に嬉しいことです。これからも辻さんらしい演奏をたくさん聴きたいです!