2026/04/02

MINAMI/吉田南 卒業レポート

2026/04/02

MINAMI

MINAMI Minami

私は今、ボストンで自分と向き合う日々を送っています。一所懸命腕を磨き心を磨き、仲間を増やし、音楽や人に対して敬意を持って振る舞いたいと思います。今、私が恵まれた環境で音楽の勉強が出来るのは、ご支援下さる江副記念リクルート…

何よりもまず、9年間(人生の3分の1にも及ぶ時間)という長きにわたり、私の歩みを支え続けてくださった江副記念リクルート財団様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました!

光が射す時も、影の中にいる時も、変わらず私の未来を信じ見守り続けてくださったことが、全ての土台となっています。この9年間の支えがなければ、今の私は存在していません。 

高校卒業後すぐにアメリカへ渡った当初の私は、国際コンクールで結果を出し、ソリストとして活躍することばかりを思い描いていました。しかし今振り返ると、それは結果を急ぐあまり、本当に必要な過程を十分に理解していない未熟な考えだったと感じています。

アメリカでの大学生活ではコンクールよりむしろ、芸術や社会学、歴史学、文学、哲学、自然科学などの学びが優先されました。初めの頃は、なぜ音楽以外の勉強を沢山しなければいけないのか…と、辛い気持ちになることもありましたが、今では新しい知識やスキルを身につけることが、音楽に「深みや奥行き」、「色彩」を与えることになるのだと理解できます。
また、移民の国であるアメリカには様々な国籍の人がおり、様々な価値観で生きています。そこに身を置くことで、他者を尊重し、誠実に関わっていく事の大切さも学びました。


(C)matiasahonen


日本を出て学ぶうちに、多角的な視点や柔軟な思考力、独自の価値観を養い、周囲の環境や他者に対して敬意と節度を持って接し、音楽の正しい知識や技術を”穏やかに”身につけることから、説得力ある美しさが生まれるのだと気付かされました。物事の「本質」を見極めていくことがいかに大切かを知りました。 不思議なことに、こうした学びと経験を積み重ねていくうちに、結果としてコンクールでも評価をいただけるようになっていきました。派手さや気を衒うことで人目を引くのではなく、これまで歩んできた時間が自然とにじみ出るような演奏を目指すようになったことは、私にとって大きな転機でした。 

その後ドイツへ渡り、音楽を「生涯の職業」として歩んでいきたいという思いが一層明確になりました。自分が学び続け、変化し続けられる環境を求め、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のオーディションに挑戦しました。「知的な解釈、明るくオープンなマインド、溢れる歌心に感動し、合格としました」との言葉をいただき、驚きとともに嬉しい気持ちになりました。
現在はベルリンを拠点に、学生生活・演奏活動を続けながら、欧米でのソリスト出演やリサイタル、室内楽公演、客演コンサートミストレスなど、多くの依頼をいただいています。さらに、ヨーロッパの主要オーケストラからソロコンサートミストレス就任のお話をいただくなど(お受けする事はできませんでしたが…)、活動の場がどんどん広がっています。
ソリストとしても、室内楽奏者としても、そしてオーケストラ奏者としても舞台に立てている今の状況は、高校生の頃の自分が思い描いていた以上のものです。


Berliner Philharmoniker Digital Concert Hallより



アメリカからドイツへと、こうした貴重な経験を積み重ね、現在に至ることができたのは、学びたいと思った時に世界へ飛び出す機会を与えていただいたからこそです。経済的な心配をする必要なく、すべてを可能にしてくださったのが財団のご支援でした。

また財団の皆様は奨学生のことをとても大切に思い、常に精神的な支えとなり応援してくださっています。9年間もお世話になった私は、その事をよく知っています。財団の皆様の存在を感じながら勉強や演奏できることが、どれほど心強かったか計り知れません。未来を信じ、日本から声援を送ってくださり、年末には笑顔でスカラシップコンサートに迎えてくださる…そのひとつひとつが困難を突破していく勇気となりました。そして演奏家としてだけでなく、ひとりの人間としても成長する機会をいただけたことに、深く感謝しています。
これから先、今日までの手厚いご支援を忘れることなく、世界のさまざまな場所で音楽活動を続けていくことが、私なりの恩返しだと思っています。

華美さより「本質」を重んじ、飾ることよりも受け継ぐべきものを大切にしながら、好奇心と探究心を忘れず、新しい学びと出会いを楽しみつつ歩める音楽家であり続けよう!と心に誓って、最後のレポートとしたいと思います。


(C)Stefan Höderath