トップページ > 奨学生活動レポート > 石田 秀 – 2019.12

奨学生活動レポート

academic

2019.12
石田 秀 Shu Ishida
>プロフィールはこちら

オックスフォード大学で学び始めてから早くも5年目となりました。工学部の学士・修士一貫コースを修了し、2019年現在、AIMS(Autonomous Intelligent Machines and Systems)博士課程1年生として人工知能・ロボティクスについて学んでいます。

39のカレッジに加え、数々の学部棟や大学施設が点在しているオックスフォードの町は、学生にとって大変暮らしやすい環境です。カレッジにはあらゆる専攻の学生が集まって衣食住の空間を共有しており、日常生活のなかに多様性と交流の機会がもたらされています。

クライストチャーチ・カレッジの食堂

自分の所属するAIMSは、Centre for Doctoral Trainingというプログラムで、二年次以降の通常の博士課程としての研究に加え、初年次にはコースワークおよび研究室のローテーションがあります。幅広い領域に触れたのちに博士課程の研究テーマを定める融通が利くことが魅力的です。コースワークでは、人工知能やロボティクスに関連した毎週異なる分野が扱われ、プログラミング課題では授業で学んだことをゼロから自分で実装することも多いので、毎週新しい知識が定着している達成感があります。個人的に今学期のハイライトだったのは、まずShimon Whiteson教授による強化学習の授業。大変論理的で理路整然とした講義で、強化学習への理解が一気に深まり、とても知的好奇心が刺激されました。アセンブリ言語やコンピュータ・アーキテクチャの講義も面白く、キャッシングやパイプラインなどのコンピュータ処理を最適化するテクニックや、それを逆手に取ったハッキングのリスクについて学びました。自由課題では、C++およびLibTorch(機械学習に使われるPyTorchライブラリのC++版)を使ってオセロの強化学習を実装しました。また人工知能と倫理の授業では、人工知能や科学技術が社会に与える影響や倫理的な懸念、どのように法整備をすべきか、プライバシーの問題にどう向き合うか、人工知能が差別的な判断や人間の意図しない判断を下す可能性をどのように評価するかなど、人工知能の研究者であれば真剣に向き合うべきである問題を数多く提示され、大変考えさせられる意義のある授業でした。

RoboCup 2019にてオックスフォード大学チームと共に

課外活動としては、今年の7月に10日間、シドニーで開催されたロボカップで、家庭用ロボットにゴミ出し、清掃、人の認識と基本的なコミュニケーション、冷蔵庫から物を取ってくる、などのタスクをこなさせる競技に参加しました。11月には友人2名に声をかけ、オックスフォードハッカソン(Oxford Hack 2019)に参加しました。ハッカソンでは過去の交通事故のデータをもとに、マップで経路計画を行う際、より安全な経路を提案するウェブアプリを開発し、マイクロソフト賞およびMost Stylish Hack賞を受賞することができました。また、オックスフォード人工知能ソサエティの研究チーム(OxAI Labs)のプロジェクトリーダーとして、11月~来年5月の期間をかけて、人工衛星の画像解析と人工知能を用いて山火事の検出や予測を行うというプロジェクトに携わっています。12月にはオックスフォード郊外にある宇宙研究機構のイベントに参加し、現地の研究者と懇談しました。環境問題の改善に人工知能を役立てられそうなプロジェクトなので、今後の進展が大変楽しみです。

Oxford Hack 2019表彰式にて

石田 秀 Shu Ishida
>プロフィールはこちら