トップページ > 奨学生活動レポート > 石原 海 – 2019.10

奨学生活動レポート

art

2019.10
石原 海 Umi Ishihara

ロンドンに住みはじめて、ちょうど一年が過ぎました。この一年間、私はUCA芸術大学で映画の勉強をしていました。いつも映像メディアを扱った作品制作をしてきましたが、日本で学んだ現代美術とは違って、今まで避けてきたテクニカルなことをこの一年間を通して学べた気がします。それと同時に、ロンドンという街を手探りで開拓していった一年だったとも言えます。東京で生まれ育っていままで土地を離れたことがなかったので、どうやって街を知ってゆくのか最初はとても戸惑いました が、いまとなってはロンドンがどこよりも心地よく感じるほど身体に馴染んできたな、と思います。

この一年間を改めて振り返って色々な進展がありましたが、自分にとって特に3つ大きな出来事がありました。一つは初めての長編映画「ガーデンアパート 」がロッテルダム国際映画祭というずっと憧れていた映画祭に入選して、日本で全国公開されたことです。いわゆる劇映画を作ったことも勉強したこともなかったなかで、作品に対する反省点も多くあるものの、こうして多くの人に観てもらえたことが本当に嬉しかったです。

そしてもう一つは、ロンドンに来てすぐ、英テレビBBCで放映される短編映画「狂気の管理人」を監督したことです。日本でもテレビの番組を制作したことがなかったので初めてのテレビ用の映画がBBCでとてもいい経験になりました。もちろん初めての英語での現場だったりテレビゆえの色んな制約があったりと大変なこともありましたが、その大変さを含めてロンドンにきたかいのある経験になったと思います。

そして最後は、ルイヴィトンのキャンペーン映像を監督したことです。広告を作るということに興味はなかったのですが、アーティストとしての私自身の作品をおもしろがってくれて依頼されたので、単に広告ではなく、とても自由度の大きな映像になったと思います。想像もしていなかった大きな企業と大きな予算で、そして全世界から集まってくるクルーで、言語が入り混じるなか映像を監督したことはとても印象深い経験になりました。そして同時に、大きな予算やプロフェッショナルなチームと映像を作るのは快感です。ただ、生きていくうえで快感だけがすべてではないように、自分の人生を受け止めつつ、誰に気にしてもらえるかもわからない、世界のどこかの(私と似たような)奇妙な人にだけ理解できるような、無意味かつ意味のありすぎる作品を作り続けていきたいという気持ちを常に忘れないように、今後も作品制作に比重をおきながら人生がんばってゆきたいです。

こうしてこの一年の主な大きな出来事を振り返ると、本当に一年一年ゆっくりですが、自分の人生が前に進んでいっているなと感じます。時に失敗をしてしまうこともあるけれど、失敗を認めて反省しつつ、また未来につながっていくような動きができればいいなといつも思っています。

今月から、UCA芸術大学を卒業してゴールドスミス大学にさらに1年間進学します。こちらは現代美術を学んだ人が映像メディアを扱うアーティストフィルムという学科で、日本で学んだ現代美術、イギリスで学んだ映画の二つをうまく融合できるような一年間にしたいなと思っています。去年一年間は制作中心だったので、これからの一年はよりリサーチに時間をかけ、ひとつの作品にじっくり向き合っていきまいと思います。