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奨学生活動レポート

art

2020.03
石川 真奎 Masaki Ishikawa

グラスゴーに到着してから半年が過ぎました。この半年間はジェットコースターのようなスピード感を日々実感しながら制作を行っていました。作家であるならば誰しもが考えるであろう、自分とは何なのか。今自分は何処にいるのか。この身体は本当に自分のものなのか。そういった問いはグラスゴーで過ごす時間が増えれば増える程自身の中で肥大していきました。壁に向かってボールを投げるけれども、返ってくるものは同じボールで、しかし真っ白だったボールは壁当てを続ける内に次第に泥で汚れていく。不毛なことかもしれないですが、制作を続けながら、少しでも泥を拾い集めようともがいています。

問いと発見をボールと泥と例えましたが、グラスゴーの最大の特徴は天気だと思います。ほとんどの日は雨風が吹き荒れ、1週間に1.2回少しの晴れ間が覗きます。12月、1月は寒さも加わり、同級生同士で精神を悪くしないように声を掛け合うこともありました。毎日毎日靴を泥で汚しながらスタジオに行く日々は辛い時もありましたが不思議と充足感を感じています。

私は日本の美大で絵画を専攻していました。グラスゴー美術学校ではMFAというプログラムに参加しています。このプログラムの特徴的な点は、作品のフォーマットの専門分野が存在しないことです。このプログラムに参加する学生の背景は多岐に渡り、私のように絵画を学んできた者、彫刻や写真、映像や音楽、哲学等、1人1人が質の異なる指針で作品を制作しています。週に一度はCrit clubという作品批評会が学生主導で行われ、毎週2人の学生が作品を展示し、批評をします。時間も1人1時間と、充分に作品の隅々まで批評し議論されます。グラスゴーはイギリスや他のヨーロッパに比べて特別大きな街とも言えません。しかし多くの学生がこの学校に集まるのはグラスゴー美術学校の教育の質の高さが理由だと思います。そしてそうした学生は自身の研究に真摯に取り組みます。たとえ社会に対して即効性のあるものをまだ生み出さないにしても、いずれ大きな舞台に立ってやるという野心を自分も含めて多くの同級生が持っています。そうした仲間達と日々を過ごせることは刺激的で、幸せです。自分にはまだあと1年以上の時間が残っています。この文章を書いている現在はイギリスでコロナが流行し、大学が閉鎖される前日です。例え大学に行くことが適わないとしても、この半年で知り合った先生と仲間とやれる精一杯のことをやっていこうと思います。