2023年12月16日(土)13:00開演 @紀尾井ホール
今年も年末恒例となった第29回リクルートスカラシップコンサートが紀尾井ホールで開催されました。留学先で研鑽を積みながら、世界で活躍する江副記念リクルート財団の奨学生12名と特別出演の3名が一堂に会し、1年の成果を披露しました。
出演者の皆さんも「年に一度全員が揃うこのコンサートは同窓会みたいで楽しみ!」というこのスカラシップコンサート。このコンサートは、お互いに刺激を受け、多くの学びがあり、次への成長のための貴重な機会となっているそうです。
今年もライブ配信を行い、配信でしか聞けない貴重な出演者インタビューやチームエピソードも挟みました。遠方から足を運べない方々にも喜んでいただけたと思います。
◆プログラム
I. チャイコフスキー/弦楽六重奏曲《フィレンツェの思い出》作品70
辻 彩奈(第1ヴァイオリン)、戸澤 采紀(第2ヴァイオリン)、
鈴木 慧悟(第1ヴィオラ)、石田 紗樹(第2ヴィオラ)、
佐藤 晴真(第1チェロ)、北村 陽(第2チェロ)
II. フ ランク/ヴァイオリンソナタ イ長調
MINAMI(ヴァイオリン)、吉見 友貴(ピアノ)
III. ショパン/ピアノ三重奏曲 ト短調 作品8
服部 百音(ヴァイオリン)、鳥羽 咲音(チェロ)、亀井 聖矢(ピアノ)
IV. ブラームス/ピアノ五重奏曲 ヘ短調作品34
外村 理紗(第1ヴァイオリン)、HIMARI(第2ヴァイオリン)、
石田 紗樹(ヴィオラ)、柴田 花音(チェロ)、小林 海都(ピアノ)
企画・プロデュース:伊藤 恵
開演の挨拶 今年の開演の挨拶はMINAMIさん。「12月になると私達奨学生の間では、今年の『あれ』では何を弾くの?といった話題が飛び交います。」と阪神タイガースの『あれ』にかけたエピソードを楽しく披露してくれました。そして、「聴いてくださる皆さまへの感謝を音に込め、仲間への尊敬と奨学生のプライドを胸に演奏します」と素晴らしい挨拶で開演しました。
I. チャイコフスキー/弦楽六重奏曲《フィレンツェの思い出》作品70
辻 彩奈(第1ヴァイオリン)、戸澤 采紀(第2ヴァイオリン)、
鈴木 慧悟(第1ヴィオラ)、石田 紗樹(第2ヴィオラ)、
佐藤 晴真(第1チェロ)、北村 陽(第2チェロ)
1曲目はチャイコフスキー唯一の弦楽六重奏曲で、最後の室内楽作品。冒頭からいきなり迫力ある演奏で6つの楽器が複雑に絡み合い変化に富む旋律。流れるように弾き手が変わる演奏に聴き手は息もつけない。
今回初めてスカラシップコンサートに出演したチェリストの佐藤さんは、「みなさんソリスト級の方ばかりで奇跡のようなチーム。そんな方々と音楽作りができる機会は滅多にない。笑いの絶えない楽しいリハーサルだったが、それぞれの意見を主張しながらお互いを高めていくリハーサルができて幸せだった」と振り返りました。
II. フ ランク/ヴァイオリンソナタ イ長調
MINAMI(ヴァイオリン)、吉見 友貴(ピアノ)
財団卒業生で今大活躍のピアニスト、阪田知樹さんの解説によると、亡くなる4年前にフランクによって作曲されたこのヴァイオリン・ソナタは、作品の被献呈者であり、名ヴァイオリニストのウジェーヌ・イザイが世界各地で演奏したことも手伝って、初演から今日に至るまで最も愛好されているヴァイオリン・ソナタの一つとのこと。
MINAMIさんと吉見さんは、共にボストンにあるニューイングランド音楽院に留学中。コンサートの直前まで学校でリハーサルを繰り返したそうです。ピアニストの吉見さんは、「リハーサルは自由度の高いもので、あまりディテールにこだわりすぎず、お互いが感じていることを共有することをメインに進めた。いろんなアイデアを試しながらリハーサルをすることができた」と話していました。また、リハーサルの合間には、鍋パーティーをしたり、おでんや手巻き持ち寄って楽しんだそうです。
III. ショパン/ピアノ三重奏曲 ト短調 作品8
服部 百音(ヴァイオリン)、鳥羽 咲音(チェロ)、亀井 聖矢(ピアノ)
財団卒業生でもあるピアニスト阪田知樹さんの解説によると、「40年に満たない短い人生で、数々のピアノ曲を作曲したショパン唯一のピアノ三重奏曲。彼の遺した楽曲の殆どがピアノソロ作品であるが、ピアノ以外ではチェロの為に重要な作品が書かれている。後に作曲者自身が『ヴァイオリンよりヴィオラの方がチェロとのバランスの上でも良いかもしれない』と知人の手紙で書いていたことは興味深い。」
チェロの鳥羽さんによると、ピアノの亀井さんの一番好きな部分は、第2楽章の中間部分のトリオという部分で、3人が奏でるシンプルだけれども心に残る美しいパート。服部さんと鳥羽さんは第3楽章のショパン独特の繊細さや温かみのある愛情を感じるようなパートが一番好きだそうです。
IV. ブラームス/ピアノ五重奏曲 ヘ短調作品34
外村 理紗(第1ヴァイオリン)、HIMARI(第2ヴァイオリン)、
石田 紗樹(ヴィオラ)、柴田 花音(チェロ)、小林 海都(ピアノ)
ブラームスの最も重要な室内楽作品の一つと言えるこのピアノ五重奏曲は、やや複雑な過程を経て作曲された。当初ブラームスは、フランツ・シューベルトの楽曲に倣ってヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2という楽器編成での弦楽五重奏を作曲した。友人で名ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムの指摘を受け、弦楽五重奏を破棄し、改作することを決意した。約2年後、2台ピアノの為のソナタを経て、友人達の勧めもあってピアノ五重奏曲に改作されることとなる。
ヴァイオリンの外村さんは、「この曲はシンフォニックで、すごく重厚感がある大曲で難しくもある。メンバー全員が世界で活躍している素晴らしい方々で、一緒に演奏するのがとても楽しかった。各々がこの曲に対して信念を持っていて、それを擦り合わせながら音楽作りができるのがありがたく、幸せだった」と語ってくれました。
カーテンコール 2023年はコロナも落ち着いたこともあり、終演後全員揃って登壇し、ヴァイオリンの辻彩奈さんが終演の挨拶を行いました。「私は演奏会というのは音楽家だけが作るものではなくて、聴衆の皆様と一緒に作り上げるものだと思っています。今日も緊張していたのですが、皆様の温かい表情や大きな拍手が私たちの原動力となりました。」とお客様に感謝の言葉をお伝えしました。
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演奏直後の満足そうな笑顔!
真剣なリハーサルの様子
配信でお送りしたインタビューの様子
2024年もお楽しみに♪♬