ピアニストとの距離は近く、表情や息遣い、身体の動き、何より指の動きもよく見える。臨場感、一体感抜群。ロマン派のピアニストが好んだサロンにタイムスリップしたかのような贅沢なリサイタルでした。
重森さんは今パリ・エコールノルマル音楽院に留学中。どんな留学生活を送っているのか、これからのこと等、お聞きしました。
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Q1.今日の演奏会では、留学中に学んだ曲を披露できることがとても嬉しいと話されていました。重森さんは2023年10月からパリ・エコールノルマル音楽院に留学され2年が経ちました。今日の演奏を聴きながら、留学中は本当にピアノに集中して、たくさんのことを学ばれたのだなと感じていました。この2年の留学はいかがでしたか?
2023年の秋から留学して、音楽に対する姿勢を改めて感じ、今まで取り組んでこなかった作曲家を軸に勉強を積み重ねてきました。それから、演奏会に足を運ぶ事が多くなり、特にオーケストラ(特に交響曲を中心に)の演奏会を中心に聴きに行くようになりました。
言うまでもないですが、ピアノはあらゆる多声部の表現や音色(様々な楽器の音色)の変化、そしてテクニック面を三身一体で表現する、まさに“偉大な楽器“だと個人的には思います。その際、オーケストラの演奏を沢山聴くことで読譜力の向上、感受性、そしてイマジネーションがより豊かになったと思います。

Q2.今日のプログラムノートにも書いてありましたが、昨今のコンクールでは、アジアからの参加者が多く、ヨーロッパの学生はコンクールにあまり興味がないようだと話されていました。そんな中、重森さんは、この先どんなピアニストを目指していきたいと思っていますか?そのためには何を身に付けていきたいですか?
近年の国際ピアノコンクールではアジア人の多さにとても驚いています。私が今まで参加したコンクールの経験では、やはりアジア人が半数以上を占めており、ヨーロッパからの参加者が非常に少なくなっている傾向があります。
これは留学して、周囲のヨーロッパの方々がコンクールに対する意識が非常に薄れているなととても感じます。なぜなら、フランス人やドイツ人は、幼少期から身近に一流の音楽に触れる環境が整っており、またアジア人のように音楽で“競い合うこと“はとても無理があると思います。演奏を通じて聴衆の心に寄り添い、そして作品の素晴らしさを伝え、感動できることが音楽家としてこれからとても大切です。
それらをモットーに、常に良い音楽を探求し、自分の演奏を通じて感動を共有できるピアニストになるよう目指しています。

Q3.好きな作曲家は誰ですか?その作曲家のどんなところが好きですか?
好きな作曲家は沢山いますが、特にリストが好きです。彼の作品は、オリジナル作品も良いですが、あらゆる作曲家の作品による編曲版もあり、個人的にはそういった作品にとても魅力を感じます。
特に、“ワーグナー=リスト編 タンホイザー序曲“には思い入れがあります。この曲はオペラの作品ですがストーリー性に加え、色んなオーケストレーションを一つの楽器で工夫を凝らしながら表現できる、壮大な素晴らしい作品です。この曲に出会って、リストの作品に対する気持ちが一層強まりました。
Q4.ピアノを弾く時、何を大事にしていますか?
必ず大切にしてることは、その作品のイメージを弾く前に考え、時代風景や場面性を感じ、そして、作曲家が残した一音一音の意図を探り、作品に対するリスペクトを常に心がけています。
どの曲も演奏する際に、聴き手に作品を通じて“何を伝えたいのか“、常に意思をしっかり持つことがとても大切です。それから更に自分の持ち味(個性)を上手に活用しながら、一つの物語を作り上げています。
Q5.パリはどんな都市でしょうか。また、ドイツやロシアとは違うと思いますが、フランス人が作曲した曲にはどんな印象をお持ちですか?
エッフェル塔や凱旋門といったシンボルもあれば、やはり私が思うにpâtissierの国だと思います。有名なお菓子専門店やブランド物は大半パリが発祥地ですから。
しかし、治安は決して良くはありません。移民政策などでここ数年デモやストライキなど、生活に支障が出ることも多々あり、同時にビザや保険証を取得するのに非常に時間がかかり、日々ヒヤヒヤしています(笑)
でも、フランス芸術(音楽)は本当に素晴らしいと思います。フランスの作品は、どの曲も美学的要素があり、それは同世代に有名な画家達が活躍していることもあってその影響を大いに受けていると思います。例えば、モネやルノワールはドビュッシーやラヴェルの作品にとても大きな影響を与えています。
音が雫のように、そして響きが繊細。私はそのような色彩的な音楽もとても好きです。


Q6.将来どんなピアニストになりたいと考えていますか?
世界の有名なホールでオーケストラと共演し、自分の演奏を通じて聴衆の心に寄り添い、そして作品の素晴らしさを共有できるピアニストになりたいです。
Q7.6歳からピアノを始めたそうですが、何がきっかけでピアノを始めたのですか?なぜピアノだったのでしょうか。
母がヤマハ音楽教室で教えていたこともあり、また家でもピアノ教室を開いていました。幼少期から常にピアノは身近な存在だったと思います。
幼稚園の頃、ヤマハ音楽教室にて音感教育を受け、同時にエレクトーンを学び、鍵盤に触れる楽しさを感じました。それから6歳の頃、母の手ほどきでピアノを習い始めました。
Q8.今、ピアノ以外で興味があることは何でしょうか。
昔から鉄道や飛行機にとても興味があり、時間がある時は色んな鉄道に乗ってその車窓からの風景を見たり写真撮ったりすることが趣味です。
また、最近は料理にもハマっています。
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重森さんの回答を読んでいると、パリへの留学がいろいろな面で重森さんの音楽に大きな影響を与えているのかなと感じます。pâtissierの国、ルノワールやモネという言葉が出てくるのが印象的です。
「競い合う」のではなく、自分の持ち味や個性を大事にながら、聴き手に寄り添い、作品の素晴らしさを伝えていく。これからもそんな重森さんの進化を応援していきたいと思います!
重森光太郎
日時:2025年12月09日
19:00
会場:霞町音楽堂
ピアノ:重森光太郎
◆プログラム
シューベルト=リスト:12の歌より 2.水に寄せて歌う 3.君はわが憩い 4.魔王
シューマン:フモレスケ Op.20
~休憩~
ショパン:ノクターン Op.62-2
ショパン:アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ変ホ長調 Op.22
リスト:ダンテを読んで~ソナタ風幻想曲



