2026/04/13

前田妃奈 卒業レポート

2026/04/13

前田妃奈

前田 妃奈 Hina Maeda

この度は、リクルートスカラシップ生として支援して頂き、本当に有り難く感謝しております。現在私は、東京音楽大学に通うため、地元の大阪を離れ寮生活を送っています。友達や先輩方の演奏がすぐ近くで聴こえてくる環境、また素晴らしい…

高校2年生から7年間というとても長い期間、お世話になりありがとうございました。あたたかいご支援のもと、のびのびと過ごせたこの7年間は、これからも私の中の大事なパーツとして輝き続けてくれると思っています。

私がこの7年間で1番考え、向き合ったことは、自分と音楽との距離感・付き合い方だと思います。そして最近になって、やっと私にとっての心地よい歩み方を見つけられた気がしています。それには、自分に対してのある種の諦めがあって、はじめてバランスが取れるようになりました。

©︎松尾 淳一郎

中学生の時、師である小栗まち絵先生から「音楽が全てになってほしくない。普段の日常があった上で、音楽は人生を彩るためのプラスαであってほしい」と言っていただいたことがあります。この言葉は、練習以外のタスクが見当たらなかった私の人生に、少しの隙間を与えてくださった気がしています。

私は、音楽家とは全てを犠牲にして日々音や楽譜と向き合い、まるで音楽をするためだけに生きているような生き方をするべきなんだと、ずっと思い憧れてきました。そういう方は実際にいらっしゃいますし、今でも心から尊敬しています。ですが、どうも私にはこの生き方はできないようでした。どうやらできないんだろうなと悟った時はかなり自分に失望しましたが、それでもいいかと諦めがついたのは、たくさんの方に出会えたからです。

高校、大学での同じ世代の音楽家との日々の交流、スカラシップコンサートでの室内楽を通しての出会い、国内外のマスタークラスやコンクールで出会った方々の生き方と向き合い方、それぞれからたくさんの刺激を受けました。出会ったすべての方が模索しながら歩んでいて、生き方や音楽との向き合い方は十人十色でした。絶対に音楽で生きていく!という強い意志のもと突き進んでいるひと、音楽は大好きだけれど他にもやりたいことがあり将来別のことをしようと考えているひと。まだまだ模索中だけれどそれを楽しんでいるひと。どの生き方も新鮮で、私の価値観を押し広げてくださいました。

©︎Wataru Sato

そしてやっと、自分が見えてきました。私はひとつのことを突き詰めながら生きていくのはどうやら諦めたほうが良さそうで、それよりもまずはヴァイオリンを弾いている自分よりも、日々生きている自分を自分で豊かにし、それを音楽に還元するほうが向いているんだな、と気づけました。

まだまだ自分自身に翻弄される毎日ですが、それでも昔よりはずっと、心地よく生きていると思います。ヴァイオリン以外のことにも目を向け、興味を持ち、とりあえず一旦なんでもやってみるというスタイルは、生きることを少し面白くしてくれました。

これからも色々なことにぶつかっては砕けたり、潰れたりすると思いますが、それもそれでいいか、と思っています。それもまた音楽の糧になると、今は確信を持って言えます。私は私自身の人生を音楽に還元していくスタイルなので。

©︎松尾 淳一郎


経験は、その瞬間から人生を終えるその瞬間まで、形を変えてずっと自分を輝かせてくれるパーツになっていきます。16歳から23歳の大事な時期を、たくさんの経験で彩れたのは、江副記念リクルート財団の皆様のあたたかいご支援あってのことでした。本当にありがとうございました。

どこに向かっていくのかは誰にも分かりませんが、これからも、歩んでいきます。

皆様の心身の健康と、ますますの発展を心よりお祈りしております。