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岡本侑也さん
(チェロ)

岡本侑也 無伴奏

2021.2.28(日) 15:00
トッパンホール

◆プログラム
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011
ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ Op.25-3
デュティユー:ザッハーの名による3つのストロフ
  <休憩>
藤倉大:osm~無伴奏チェロのための
カサド:無伴奏チェロ組曲
クラム:無伴奏チェロ・ソナタ
アンコール曲:カザルス:鳥の歌(カタロニア民謡)

2021年2月28日(日)、岡本侑也さんのリサイタルが開かれました。この日のプログラムは全曲無伴奏。ご自身が「野球で言えば160kmの豪速球に挑戦するようなプログラム」と書かれていたプログラムです。昨年指を痛められた岡本さんでしたので、大丈夫かな。。という心配もありました。コロナ禍で開催できなかったコンサートもありました。そんな中迎えたリサイタルに込めた岡本さんの思いを伺いました。

Q1. 無伴奏だけのプログラムで聴衆を惹きつけ続けるのはなかなか大変なのではないかと思いますが、どんな気持ちで準備をし、舞台に上がられましたか。また、演奏中はどんなことを考えていましたか。

 

A1. 無伴奏作品は1人で演奏するため、取り組む際は孤独を感じることもありますが、その一方で、演奏者に無限の自由を感じさせる演奏形態だと思っています。色々な空間の味わいを自分で自由に創造できることはとても楽しく、今回のプログラムも心より楽しみにしておりました。

また、昨年の手の負傷で4ヶ月ほど舞台から遠ざかってしまっていたので、久々の舞台は本当に胸がいっぱいになりました。復帰までの道のりを支えてくださった皆様に、深く感謝申し上げます。 

 

 

Q2. プログラムノートに、藤倉大氏の「osm~無伴奏チェロのための」は「譜面を見ると目が眩むような超絶作品」とありますが、拍や小節はあるのかな、一体楽譜はどのようになっているのかな、と思いながら演奏を聴いていました。一般の聴衆には読解不可能な楽譜かと思いますが、いかがでしょうか。

 

A2. 拍や小節は明確にあるのですが、なかなか目の眩むようなページが続出します() 変拍子が続いたり、フラジオレット奏法*が多用されたりして、それを体にインプットする作業は、今まで取り組んできた作品の中でも群を抜いて大変なものでした。 (*弦を強く押さえずに軽く触れて通常の奏法とは異なった音色で倍音を出す奏法)

 

Q3. 岡本さんにとって現代音楽の魅力はどんなところにありますか。

 

A3. 個人的には、今まで存在しなかった未知の響きやイメージを体験できることが一つの大きな魅力だと思います。

現代作曲家の方と同じ時代の流れを体験しているからでしょうか、曲に取り組んでいる際、作曲家の考え方や物事の捉え方など身近に感じたり、共感しやすいことが多いように思います。

 

Q4. 今回のリサイタルを成功させたことは、チェリストとして大きなステップになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

A4. 今回のプログラムは本当に重量級で、今の自分の限界まで挑むことができた達成感はあります。

ただ、また次の演奏会に向けて、曲目も変わりますとゼロからまた準備をしなければなりませんので、今までと変わらずに地道に精進していきたいと思っております。

 

 

Q5. 昨年は世界中がコロナ禍で大変な1年でしたが、ドイツの様子はどうだったでしょうか。日本とドイツでの対応の違いなど感じましたか。

 

A5. ドイツでは昨年11月からロックダウンが実施され、それ以来お客さんが入場されての演奏会は開催されておらず、とても寂しい状況です。現在レストランなどはテイクアウトのみで、公共交通機関を利用する際はFFP2マスクという医療用マスクの着用が義務付けられています。昨年コロナが流行し始めた頃、ドイツ人をはじめ多くのヨーロッパ人にはマスクをつけることに相当な抵抗があったようですが、今ではもうすっかり日常生活に馴染んでいます。

 

Q6. 今年はどんな年にしたいですか。どんな目標をお持ちですか。

 

A6. 今年は楽しみなプロジェクトが予定されておりますので、とにかく健康第一で、自分の目の前の課題に取り組んでいきたいと思います。

また、自分の演奏を通して、音楽の豊かさや尊さを今後広く伝えていくことができたらと思います。

 

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コロナ禍にあっても、大事な指を負傷して大変な時期でも、前を向いて進化を続けていた岡本さん。岡本さんはいつもニコニコしていて周りの人をほっとさせてくれる優しい雰囲気の持ち主ですが、窺い知れない程の強さを秘めているのだと思います。

岡本さんが教えてくれた現代音楽の楽しみ方、「今まで存在しなかった未知の響きやイメージを体験できること」を念頭に現代音楽も聴いてみたくなりました。

今年は楽しみなプロジェクトが予定されているとのこと。また驚かせてくれることでしょう。どんなプロジェクトなのか楽しみです♪