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藤田真央さん
(ピアノ)

藤田真央 ピアノ・リサイタル

2020.9.17(木) 19:00
東京オペラシティコンサートホール

◆ピアノ:藤田真央

◆プログラム
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第13番 「幻想曲風ソナタ」変ホ長調 Op.27-1
チャイコフスキー:ロマンス へ短調 Op.5
チャイコフスキー:ドゥムカ ハ短調 -ロシアの農村風景- Op.59
アルカン:「短調による12の練習曲」から第12番 ”イソップの饗宴”  ホ短調 Op.39-12
      <休憩>
ショパン:幻想曲 ヘ短調 Op.49
ショパン:ポロネーズ 第7番 変イ長調 「幻想」Op.61
シューベルト:「さすらい人幻想曲」 ハ長調 Op.15 D.760 

アンコール曲
・ショパン:ワルツ 嬰ハ短調 op.64-2
・リスト:愛の夢 第3番
・藤田真央:藤田真央によるパガニーニ変奏曲

今年の4月から財団の奨学生としてお迎えした藤田真央さんでしたが、コロナの影響でこの日まで生の演奏を聴く機会がありませんでした。初めて聴いた藤田さんの演奏では、その表現力の大きさに驚かされました。その表現力はどこからくるのか探ってみたいと思い、ご本人にいろいろとお聞きしました。その回答からはとても素直に自分を表現される藤田さんが垣間見えます。

Q1.  3歳からピアノを始められたそうですね。お父様の仕事の都合で山梨や長野に住まわれ、そこから東京まで毎週末ピアノのレッスンに通われたとのこと。それが楽しかったそうですね。ピアノを習いたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。また、毎週東京まで通うのが楽しかったのは何があったからでしょうか。

ピアノは2才上の兄が先に習っていたので、私も物心つく前から始めていました。母が運転する車で毎週日曜日に東京の音楽教室に通っていたのですが、家族4人での長距離ドライブは、旅行気分で楽しかったのかもしれません。車の中でお弁当を食べたり、DVDを見たり。

Q2.  月並みな質問ですが、藤田さんが好きな作曲家は誰でしょうか。またその理由は何でしょうか。

モーツァルトです。発想が豊かで弾いていて様々なアイディアが得られます。とても幸せな気分に満たされるところに魅力を感じています。

Q3.  演奏する際に一番大事にしていることはどんなことですか。

全ての音を自分が支配して、どういう音を出したいのか、音の響き・バランスをすべての指で体現できるように心がけています。

Ⓒヒダキトモコ

Q4.  プログラムノートに、「今回のリサイタルのテーマはファンタジーです。」とありました。「決まった型のないファンタジーという音楽は、自由そのもの。さまざまな作曲家の幻想曲を集めて構成していますが、それはつまり、私が抱く作曲家たちのファンタジー、私自身のファンタジーを弾くということ。」とありましたが、「私が抱く作曲家たちのファンタジー、私自身のファンタジーを弾くということ。」とはもう少し具体的に言うとどういうことでしょうか。

曲の形式にとらわれず、作曲者の自由な想像力に基づいて作られた「ファンタジー」を、ショパンならこんな風に想像していただろうか?シューベルトなら?ベートーヴェンなら?とあくまで私が考える各作曲家の「ファンタジー」を私自身の想像で演奏しました。プログラムを通して、多種多様なファンタジーの世界が伝えられたらと思っていました。

Q5.  プロフィールに、THE TIMES誌に「深みのある解釈を持ちつつ、恐れを知らない大胆な表現ができる。」と絶賛されたとありました。とても納得したのですが、恐れを知らない大胆な表現はどこからくるのでしょうか。ご自分ではどう思われますか。

私は演奏する曲を細部にわたり分析した上で、音楽を構築していきますが、私自身変わっている人間なので、曲の解釈も普通でない時があるのかもしれません(笑)。しかし、チャイコフスキーコンクールで審査員の先生方から、恐れることなく自分を信じて突き進んで行くようにと言ってもらえたことが自信となり、何も恐れることなく思うままに演奏していることが、このように評価してもらえたのだと思います。とても嬉しいです。

Q6.  プログラムノートにある藤田さんによる各曲紹介を読むと、難解ではなく誰もが分かるように書かれていて、また楽しいエピソードも紹介されていてとても楽しく読めます。曲や演奏に対してもとても興味が持てます。藤田さん自身が曲の分析を楽しんでいるように感じますが、いかがでしょうか。

曲の分析はとても楽しいです。全体の構造を掴み、どう演奏に繋げていくか考える過程はいつもワクワクします。

©ヒダキトモコ

Q7.  2019年6月にモスクワとサンクトペテルブルクで開かれた「第16回チャイコフスキー国際コンクール」のピアノ部門で第2位を受賞されました。それまでにもいろいろな賞を受賞されてきた藤田さんですが、ロシアで開かれたチャイコフスキー国際コンクールで2位を受賞されたことはやはり画期的な出来事だったのではないでしょうか。藤田さんにとってこの賞はどんな意味を持つものでしたか。

2位という結果も嬉しいですが、私の演奏がモスクワの聴衆に受け入れられたことが大きな財産になりました。一次の演奏から思いがけずスタンディングオベーションとなり、「ベビーMAO」という愛称までつけてくれて、私の演奏をとても喜んでもらえました。私の演奏スタイルや方向性に自信を持てるようになりました。

チャイコフスキー国際コンクール公式ホームページより

Q8.  演奏会に行っても、どの写真や映像を見てもいつもニコニコしている藤田さんですが、大好きな音楽に囲まれていることが嬉しくてたまらないように見えます。辛いと思うこともありますか。コロナ禍で演奏会が次々と中止や延期になってしまいましたが、落ち込むこともありましたか。

そうですね(笑)。心で思っていることがそのまま顔に出てしまうので、大好きな音楽をしているときは笑顔。私、とても素直なんです(笑)。コロナで楽しみにしていた演奏会が次々中止になったときはさすがに落ち込みました。サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団の日本ツアーや、ラ・フォル・ジュルネ、アルゲリッチ音楽祭、海外の公演もたくさん無くなりました。でも基本ポジティブな性格なので、少しずつ演奏会も戻りつつある今は、とてもハッピーです!

Ⓒヒダキトモコ

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ご自分でも仰っているように藤田さんはとても素直な方なのだと思います。恐れることなく自分を素直に表現できるところが、藤田さんの表現力に繋がっているような気がします。チャイコフスキー国際コンクールの審査員の先生方に「恐れることなく自分を信じて突き進んで行くように」と言ってもらえたように、これからも縮こまることなくそのMaoスタイルを貫いたら、どんなピアニストになるのだろう。。と益々期待が膨らんだ演奏会でした。