2025/07/01

柴田花音 卒業レポート

2025/07/01

柴田花音

柴田 花音 Canon Shibata

この度は公益財団法人江副記念リクルート財団奨学生に採用して頂きましたこと、心より感謝申し上げます。この春にはいよいよ大学卒業を迎え、秋よりアメリカ・ノースウェスタン大学ビーネン音楽院という新たな環境下での学びが始まります…

江副記念リクルート財団の奨学生として過ごしたこの数年間は、チェリストとして、そして一人の人間として、深く自分を見つめ直す時間でした。チェロを専攻するにあたって、当初の目標はとにかく「上手くなること」。自分が心から尊敬できる先生のもとで学びたいという一心で、あまり多くを考えずにその道を選びました。それが自分にとって一番正直な動機であり、正しい選択だと信じていました。

 

進学先が総合大学だったため、音楽専門の学校ほど演奏に集中できる自由さはありませんでした。思い描いていたような多様な挑戦は、正直あまりできなかったかもしれません。ただそのぶん、余計なことに気を取られず、自分と楽器に徹底的に向き合い、満足のいくまで基礎や表現を突き詰めることができました。限られた時間の中で、自分にとって本当に必要なことを選び抜き、集中して取り組めたことは、今思えば貴重な訓練だったと思います。

 

また、総合大学という環境だからこそ経験できた学びもありました。演奏家として表に立つことだけでなく、演奏会の企画や運営、舞台裏の仕組みに関する授業や実習など、普段はなかなか触れられない裏方の仕事にも向き合う機会がありました。これが思いのほか大変で、責任の重さやコミュニケーションの難しさに直面しましたが、それと同時に、音楽を「届ける」ということの本当の意味を考えるきっかけにもなりました。その経験を通じて、演奏するだけでなく、「どう音楽を社会とつなげていくか」という視点にも興味を持つようになり、将来やりたいことが少しずつ広がってきたように思います。

 

財団のご支援があったからこそ、演奏や学びに集中することができ、経済的な不安を抱えることなく、楽器のメンテナンスなどにも積極的に取り組むことができました。

 

また、音楽以外の分野で活躍する仲間との出会いも、この財団ならではの財産です。まったく違う価値観や知識に触れることで、自分自身の視野が広がり、音楽に対する考え方にも深みが生まれました。

 

これからは、海外でさらに研鑽を積み、演奏活動と並行して、教育や企画、新たなプラットフォーム作りといった形でも音楽に関わっていきたいと考えています。演奏するだけでなく、音楽が人と人とをつなぐ手段としてどれほど豊かな可能性を持っているかを、もっと多くの人と共有していきたい思いが、今の私の中に芽生えています。

 

最後に、最大限に学びを支えてくださった江副記念リクルート財団の皆様に、心より感謝申し上げます。