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奨学生活動レポート

art

2019.07
西永 和輝 Kazuki Nishinaga

僕は先月、スレード美術学校での18ヶ月の修士課程を修了しました。スレードはUniversity College London (UCL) に属する美術大学で、スタジオでの実践に重点を置いた教育をしています。また、総合大学UCLの他学部の資料にもアクセスがあるのが特徴です。

僕が選択したのはMFAという制作を重視したコースだったのですが、その中でも研究課題はありました。その課題というのもアカデミックと言うよりはリサーチスキルの向上を目的としたもので、各々の興味と制作を結びつけて文章と口頭で発表するというものでした。奨学金に応募するにあたり、「ロンドンに集まる多様な造形文化の蒐集品を調査したい」という旨を申し上げたのですが、実際のこちらでの見聞の結果、僕は中でも装飾文化に興味を寄せるようになりました。装飾は宗教、習慣、権力、経済など、時代場所に応じて背景こそ異なれ、ある意味地球上最も普遍的に行われてきた造形活動と言える一方、発達すればするほど機能性や生産性を損ない、不合理化していくという傾向も持ち合わせています。詳細は紙幅がありませんが、発表ではこの人間と装飾の不思議な関係を表現するべく、「装飾は植物や癌細胞のように人の都合を顧みず成長する」というアイデアを提案しました。 また、実制作においてもこのアイデアを用いて新たなシリーズを始めました。主に石膏を使って木などで精緻に作った骨組みを覆ってみせる彫刻です。石膏の造形はきわめてラフに残しており、木部とのコントラストを際立たせると共に、さらなる成長と変化を予感させることを意図しています。

上記のシリーズを含めてですが、人の論理とそれ以外の摩擦、あるいは人の枠組みを通り抜けてしまうものに、自分の興味がありそうだと言うことが分かってきました。修了展では先の装飾彫刻に加え、機械、エッチング、映像といった多様なアプローチでこの世界観を表現することを試みました。自身に最も変化を感じる点としては、このアプローチの仕方がより幅広く柔軟になった事だと思います。一度この変化を受け入れてしまえば、これからさらに新しい試みを加えていくことにも抵抗がなくなることでしょう。

振り返って思うのは、本当に人との出会いに恵まれたということです。良いクラスメイトに囲まれ、良いチューターに指導を受けました。これらの人に出会えるタイミングで留学を可能にしてくれた皆様のご支援に、この場をお借りして深い感謝を申し上げたいと思います。