トップページ > 奨学生活動レポート > 宮田 恵理子 – 2019.08

奨学生活動レポート

art

2019.08
宮田 恵理子 Miyata Eriko

私は現在バーゼルというドイツとフランスとスイスの国境に住みながら、チューリッヒ芸術大学に通っています。アルプス山脈に囲まれたスイスは、日本と似た伝統行事などがあり、親しみが持てる国でもあります。

 チューリッヒ芸術大学は、たぶんヨーロッパ一番と言っていいファシリティと国外の研修が強みで、ヴェネチアビエンナーレなどの大きな催事もこなす教授が数名学科に在籍しており、中央ヨーロッパでありながらも、クラスメイトの半分以上が移民や留学生などで構成される中央ヨーロッパでは珍しい学科です。大学院なので、クラスメイトはアメリカで作品を売ったり、中国で展示をしたり、ナイジェリアでフォトフェスティバルに参加したり、ペルーでプロジェクトを立ち上げていたりなど、国際色が豊かでみんなプロフェッショナルに活動しています。スイスは、アートバーゼルがある関係で、現代美術が売り買いされる場所でもあります。ジュネーブには、美術品専門の空港があるなどし、それらに対してのカルチュアルクリティックも自発的に行い、市場を頼るのではなく研究機関にどう美術作家が残り、制作をすることができたりするのか、といった概念に基づいたリサーチベースの作品制作についての授業も行われたりします。個人的に、美術作家になる前に何年も学者の側にいた作家が好きだったりすることもあり、学術的なアーカイブに対してアーティストがどのように自発的にその枠組みを壊して新しい意味を生むのかということも勉強できました。そういった内容も日本、もしくは他の中央ヨーロッパの大学では得ることのできないインプットだと思います。ワンセメスターにつき、3つ以上の国外研修を望めば参加することができ、私は今までに香港、イタリアのパレルモ、インドのデリーでの研修に参加しました。大学院ではありますが、かなりのインプットがあるのがこの大学の特色なのではないかと思います。

 この大学院に来て、1ヶ月間の授業が全てポストコロニアリズムについてだったセメスターがありました。日本に何十年かいた人間が、ヨーロッパに約3、4年いるとなると、モラルのレベルで知らなければならないことを、知っていないという事実をその時期に突きつけられるのは典型であると思います。香港、台湾、沖縄に行き、アジアに置ける二元論におさまらない複雑なレイヤーを解きほぐすためのリサーチをはじめました。ヨーロッパに同じくらい長く住んでいる韓国から来ている学生と、同じ目線でこれらのことが話せるのも、大学に来て嬉しかったことです。