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Q1.この日はまずご自身が作曲した《プロローグ~ピアノと弦楽のための~》を披露されました。12人の弦楽奏者からなるフィルハーモニー・カメラータ・ベルリンとの共演でした。あとに続くベートーヴェン《ピアノ協奏曲第3番》へのプロローグとのことでしたが、どんなことを軸にこの曲を作曲しましたか?
ベートーヴェン協奏曲3番の前に演奏する小曲として着想し、この頃のベートーヴェンの感情や背景からインスピレーションを得ました。特に耳が聴こえなくなり始めた恐怖や、本当は人と関わりたいのに孤独になってしまう、そんな苦悩にまみれた時期だったように思います。そんな中でも自分の使命として芸術に身を捧げ、自分の力で道を切り開いていくんだという強い意志を、自分なりに解釈して音楽に落とし込みました。
曲の最初に出てくる重苦しい主題が、後半では困難へと立ち向かう大きなエネルギーに変わり、最後は広い空間へと突き抜けてハ長調の和音で終止し、そのままベートーヴェン3番へとつながります。

Q2.ピアノとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスで、11段の総譜を作曲されたとか。その過程では、ピアノの音だけで、弦楽器それぞれの音を想像しながら作曲されたと思いますが、実際に12人の弦楽器の音と初めて合わせた時、ご自身ではどのように感じましたか?
自分の内面にあった世界を実際の音として聴ける瞬間はやはり嬉しかったです。ただ、想像していたものと実際の弦楽器で鳴ったときの印象には違いもありました。
自分では比較的わかりやすいハーモニーで書いたつもりだったのですが、初めは僕の中にある曲のイメージをメンバーの皆さんと共有するところに苦労しました。言葉で説明したり、楽譜に小さな改良を加えたりもしながら少しずつ形にしていきました。実際に演奏してもらうことで初めてわかることもたくさんあり、貴重な経験になりました。

Q3.重なり合った厚みのある美しい重奏が印象に残っています。5分位の曲だったかと思いますが、あっという間に終わり、もっと聴きたいと思いました。プロローグという題名ですが、これに続く曲を作る予定はありますか?
この作品はベートーヴェン3番への導入として書いたものなので続編は考えていませんが、作曲そのものはこれからも続けていきたいです。今回はピアノと弦楽合奏という編成でしたが、いずれはピアノ協奏曲を書いて自分で初演したいという目標があります。
Q4.その後に続く、ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第3番》は、通常オーケストラとの演奏ですが、この日は12人の弦楽器奏者との演奏でした。12人それぞれの弦の音とピアノの音がよく聴こえ、重厚でありながら繊細な印象でしたが、どのように感じていましたか?
オリジナルとは違った透明感や調和がありつつ、しっかりと元来のエネルギーも伝えられたかなと思っています。指揮者がいなかったので、お互いがどう歌ってどこへ向かおうとしているのかを聴き合うことが、いつも以上に大切でした。一人ひとりの音や表現がよく聴こえて、ツアーを通して毎回違うアイデアが飛び交っていたのも面白かったです。


Q5.作曲は続けていきたいとのことですが、どんな曲を作曲したいですか?室内楽や協奏曲の作曲は、多くのパートを作曲し譜面に起こすなど途方もない大変さを想像してしまいますが、大変な面と喜びの面について教えてください。
様々なスタイルに挑戦して自分の書法を確立しながら、先ほどもお話しましたがゆくゆくはピアノ協奏曲を書きたいです。
作曲していると、アイデアが思いつく瞬間は楽しいですが、それを人に伝わるように構築して洗練させていく過程は、先の見えない試行錯誤の連続で、苦しい時間も多いです。でもそんな中で良い解決策が見えたり、自分が納得できる音が置けた瞬間の喜びはひとしおです。
弦楽を書く上では、それぞれの楽器の最も良い響きを引き出して倍音を上手く重ねていくという点で、もっと勉強を深めてみたいなと思いました。
Q6.昨年、エリザベート王妃国際音楽コンクールで5位を受賞した後、SNSでコンクール卒業を宣言し、新しい曲の開拓、作曲、海外への進出を目指すと発信されました。その通りに進まれているように思いますが、ご自分ではどのように感じていますか?その推進力はなんでしょうか?
コンクール後にやりたいと思っていたことは少しずつ形にできていると思います。今回の自作曲の初演もそうですし、素晴らしいオーケストラと共演できる機会をいただいたり、やりたいレパートリーに時間をかけてじっくり取り組んだり。今後も自分が好きだと思う音楽を、たくさんの方に共有できるよう活動を続けていきたいです。
Q7.どんな活動をするにも健康が第一だと思いますが、健康維持のために気を付けていること、音楽のためにやっていることはありますか?
軽いジョギングや筋トレを生活に取り入れられたらいいなと思っています。食事もたんぱく質や栄養バランスを考えて、脂質や糖質、塩分をなるべく控えることが大切なのだろうと思っています。若いうちに、このような点をしっかり意識しておけるとよいのかなと思います。

Q8.ドイツでも自炊して日本食を作ったりされているとか。お料理は好きですか?甘いものを食べたりしますか?カルピスが好きなのは知っていますが、アルコールは飲みますか?
とにかく美味しいものを食べたい一心で料理しています。ドイツでは外食は高いしやはり日本食が恋しいので、色々レシピを調べながら同居人と作っています。最近だとカツ丼やもんじゃ焼きが上手くいきました。あと僕のガトーショコラは傑作です。
僕は日本食と共に頂く日本酒が大好きですが、ドイツではあまり飲みません。日本から原液を持ち込んで、もっぱらカルピスを飲んでいます。
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亀井さんの回答からは、音楽はもちろん、料理や健康、さらには前回のインタビューでお聞きした謎解きに至るまで、興味を持ったことをとことん追究する、並外れた探求心を感じます。音楽に限らず、どんな分野においても、深く掘り下げ、本質を探ろうとする探求心は、大きな成果を生み出すために欠かせない資質なのだと思いました。
「ピアノ協奏曲を書き、自分で初演したい」という目標も素晴らしいですね。ピアノ協奏曲では、ピアノに加え、弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器など、様々が楽器で音楽を創りますが、それぞれの楽器の特性を生かしながら、音を重ね、響きを組み立てていく作業は、まさに試行錯誤の連続なのでしょう。それだけに、「自分が納得できる音が置けた瞬間の喜びはひとしお」という言葉には、創作の難しさと喜びが凝縮されているように思います。
コンクールを卒業した後も立ち止まることなく、大きな目標を見据えて歩み続ける亀井さん。その姿に、大きな可能性を感じます。いつか、亀井さん自身が作曲したピアノ協奏曲を、亀井さん自身のピアノで聴ける日が来ることを、心から楽しみにしています。
亀井 聖矢
日時:2026年09月15日
19:00
会場:東京芸術劇場
室内オーケストラ:フィルハーモニー・カメラータ・ベルリン
ピアノ:亀井聖矢
◆プログラム
亀井聖矢:プロローグ ~ピアノと弦楽のための~ (ピアノ:亀井聖矢) *新作・初演
ベートーヴェン(W.タリアズ編):ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37 (ピアノ:亀井聖矢)
<休憩>
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ (チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ)
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ



