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第52回財団総会【午前の部】


午前の部では財団活動報告から始まり、現役奨学生による成果報告を行いました。続いて卒業メッセージ、卒業生の紹介など、多彩なコンテンツを通して交流を深めました。



◇新規奨学生紹介 
今年度は52回生として器楽部門5名、アート部門2名、スポーツ部門7名、学術部門8名、合計22名の世界に挑戦する学生を採用。午前の部に参加した17名の新規奨学生がそれぞれ自分の取り組んでいる事と奨学生としての意気込みを発表しました。 

新規奨学生22名






成果報告① 器楽部門44回生 上野通明さん・アート部門49回生 大竹紗央さん
現役奨学生による一つ目の成果報告として、アートと器楽という異なる分野での財団奨学生のコラボレーションについて、発表を行いました。
昨年の12月に開催された器楽部門44回生の上野通明さんの無伴奏チェロリサイタルにて披露された新曲、Phoenixの演奏に、アート部門49回生の大竹紗央さんが制作されたエレクトロニックインスタレーションアートの映像がバックグラウンドに投影されるコラボレーションが行われました。

器楽部門44回生 上野通明さん

発表では「コラボに至った経緯」、「新曲Phoenixについて」、「普段の自分の演奏、制作との違い」などを詳しく説明しました。今回の新曲Phoenixは二人の共通の知り合いである作曲家の方が、2020年、社会活動が制限され芸術も沈黙を余儀なくされた頃Phoenixを発案し、「いかなる社会の混乱においても真の芸術はその時代を映し出し、共感や刺激を生み、決して屈することなく蘇る。本作における不死鳥はこうした芸術そのものを重ねている」という思いのもとに構想、実現に至った経緯を上野さんからお話ししました。

アート部門49回生 大竹紗央さん

コラボを経ての感想について大竹さんは、今回企画が持ち上がった当初、上野さん、大竹さん、そして作曲家の方それぞれが別の国にいたこともあり、「曲の解釈を含めたコミュニケーションをもっと深くできれば良かった。もし次回コラボする機会があれば、臆することなく上野さんに曲に対しての思いを聞いていきたい」。上野さんからも「今回自分の演奏の後ろに大竹さんの視覚芸術が投影されていたので、今度はより演奏と芸術の相互関係のあるコラボをできれば面白いのではないか」などのアイデアもお話ししました。
現状に甘んじず、さらに良い作品を生み出そうとする飽くなき探究心を二人から感じられた発表でした。今回、器楽とアート部門の学生のコラボについての発表が、現役奨学生にも新しい試みとして良い刺激をもたらした様子でした。



◇奨学生成果報告② スポーツ部門51回生 中山楓奈さん西矢椛さん
女子スケートボード ストリート選手の中山楓奈さんと西矢椛さんに、スポーツ部門の成果報告をして頂きました。二人とも輝かしい業績を紹介されました。中山楓奈さんはパリオリンピックの予選大会で優勝・招待制のプロコンテスト「SLS」での準優勝。西矢椛さんは東京オリンピック優勝、カリフォルニアで開催されたX-GAMESで優勝、DEW TOURで優勝されました。
また、中山さんは大会以外でも、普及活動に勤しまれている様子を共有してくださいました。地元の富山県で、スケートボードのイベントを通じてスケートボードを普及されていらっしゃいます。

スポーツ部門51回生 中山楓奈さん

西矢さんもスケートボードの普及のため、スケートボード教室を開催されました。自身の成果を出すだけでなく、スケートボードに触れる機会が少ない方々に普及をする姿は大変刺激になりました。

スポーツ部門51回生 西矢椛さん



◇奨学生成果報告③ 学術部門49回生 田久保勇志さん
現在、ジョージア工科大学で航空宇宙工学を専攻されている田久保さんに成果報告に登壇して頂きました。田久保さんはUJA (海外日本人研究者ネットワーク)論文賞、日本進化計算学会研究会 最優秀論文賞、Breakwell Student Paper Awardなど、多数の賞を受賞されています。

学術部門49回生 田久保勇志さん

月・火星への有人探査から将来の宇宙利用に渡って自身のこれまでの成果をまとめながら丁寧に紹介してくださいました。今後はスタンフォード大学大学院に進学し、航空宇宙工学を学ぶ予定とのことなので、今後の活躍が楽しみです。



卒業生からのメッセージ① 器楽部門43回生 阪田知樹さん
卒業生からのメッセージでは、器楽部門43回生の阪田知樹さんのインタビュー動画を上映しました。総会委員による1時間にも及ぶインタビューの中から、奨学生目線で特に励みになるメッセージを厳選したとても内容の濃いメッセージ動画でした。

器楽部門43回生 阪田知樹さん

阪田さんは5歳からピアノを始め、西川秀人、渡辺健二、パウル・バドゥラ=スコダ、アリエ・ヴァルディの各氏に師事。6歳より作曲を始め、音楽理論・作曲を高橋千佳子、永冨正之、松本日之春の各氏に師事。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科を中退し、ハノーファー音楽演劇メディア大学に特別首席入学しています。学士課程、修士課程ともに最優秀の成績にて修了。2021年現在第3課程に在籍。 16歳よりパウル・バドゥラ=スコダ氏に10年に渡り師事。17歳でコモ湖国際ピアノアカデミーの最年少生徒として認められています。
動画では、「音楽を始めたきっかけ」、「演奏中はどのような事を考えているのか」、「今までで苦労した事」、「音楽家として活動するうえで大切にしている事」、「財団生時代のエピソード」、「魅力を伝える上で意識している事」など、事前に奨学生から集めた質問に対する回答をはじめとする様々なエピソードをお話し頂きました。
演奏技術を磨く上で、作曲家が生きた場所に滞在して昔に思いを馳せながら練習したり、尊敬する作曲家リストのお墓参りを演奏会の前に行われたりと、音楽に対する情熱が伝わる奨学生時代のエピソードを共有してくださいました。自国でない文化から生まれた音楽を演奏する感性を磨く為に、違うジャンルの美術に対して学術的に向き合ったり、作曲家文化・歴史的背景を調べたりと、阪田さんの常に努力する姿勢が垣間見れるインタビューでした。
現役奨学生に対しては、「自分が情熱をもって取り組んでいる事をすでに見つけている事はとても幸運な事。その情熱を大切にして、より学びを発展して目標を実現する為にアンテナを貼りながら努力を続けてください。そのようにできるのは若い時の特権なので、今の時間を大切に頑張りたい事に向かって邁進してください。」という力強いメッセージを頂きました。阪田さんの音楽に真摯に取り組むエピソードに、現役奨学生も真剣な表情で聞き入っているようでした。



◇卒業生紹介
今年度をもって財団をご卒業される21名の方の紹介を行いました。卒業生代表として、器楽部門46回生 周防亮介さんよりご挨拶を頂きました。財団生としての5年間の歩みを振り返る中で、スイスでの留学生活やスカラシップコンサートでの思い出を話してくださいました。財団からの支援のおかげで勉強や演奏活動に集中できたこと、音楽家としての基盤を築くことができたことに特に感謝しているとおっしゃていました。これからも努力を惜しまず進み続けると力強く言われた周防さんの姿に、大変感銘を受けました。


器楽部門46回生 周防亮介さん



卒業生からのメッセージ② スポーツ部門43回生 八村塁さん
午前の部の締めくくりとして、スポーツ部門45回生卒業生でいらっしゃり、現在はNBAのロサンゼルス・レイカーズで活躍されている八村塁選手から、現役財団生に向けて激励のメッセージを頂きました。以下が八村選手からのメッセージ全文になります。

スポーツ部門45回生 八村塁さん

「皆さん、こんにちは。八村塁です。僕は13歳の時にバスケに出会い、今現在、アメリカのNBAでプレーしています。毎日努力し、チームに貢献できるように頑張っています。海外で生きていく中では辛いこと、上手くいかないことがあると思います。でも財団の皆さんならきっと乗り越えられると思います。このメッセージで皆さんを応援できたら嬉しいです。一緒に頑張っていきましょう。」
先輩からの力強いメッセージに、奨学生一同身の引き締まる思いでした。


挑戦する姿勢を持ち続け、世界で成果を出し続ける財団生の発表に、多くの財団生が刺激を得たことと思います。部門の垣根を超えて交流が行われ、充実した時間となりました。