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第53回江副記念リクルート財団総会を開催:No.1(午前の部)

財団交流イベント
第53回江副記念リクルート財団総会を開催:No.1(午前の部)

当財団では、毎年総会を開催し、現役奨学生・役員・選考委員・アルムナイらが一堂に会して成果報告や交流セッションなど多彩なコンテンツで交流を行っています。

財団奨学生は世界各国の留学先からオンラインで参加するため、時差を考慮し午前の部・午後の部の二部構成で実施。午前の部では財団活動報告から始まり、現役奨学生による成果報告、そして財団生が各地で集まり開催したキャンパスツアーの動画の放映を行いました。また卒業メッセージ、卒業生の紹介など、多彩なコンテンツを通して交流を深ました。
(報告書:学術部門51回生 白井 那奈子



1. 新規奨学生紹介 

今年度は53回生として学術部門5名、スポーツ部門7名、器楽部門4名、アート部門3名、合計19名の学生が採用されました。午前の部に参加した12名の新規奨学生がそれぞれ自分の取り組んでいる事と奨学生としての意気込みを発表しました。



2, 成果報告①:学術部門51回生 末岡 陽太朗さん 「海馬における時空間記憶の形」
末岡さんは、現在米国のJohns Hopkins大学の神経科学の博士課程にて海馬という脳の一部に特化し、記憶に関して研究しています。「海馬における時空間記憶の形」というタイトルで、博士論文研究として行われている記憶の研究について成果報告を行いました。

末岡さんによる場所細胞についての説明


客観的な”外の世界の情報の記憶”と、より主観的な”感覚を通して得た情報の記憶”には違いがあり、それらの情報を脳内でどのように統合して記憶として形成されるのか、という複雑なトピックを研究しています。それらを日常生活での例え話や実際の研究のイラストを使い、分野を超えたオーディエンスにわかりやすく説明しました。

博士論文研究以外にも、学部生の時の研究を発表した論文や、教育に貢献するためにご自身が理事として活動される留学コミュニティなど、博士論文研究だけにとどまらない幅広い活躍について共有し、奨学生の興味とモチベーションを引き出しました。

発表後の質疑応答では、「仮説を基に実験を行い結果を論文で発表するまで一般的にはどれくらいの時間がかかりますか?」という質問に対してはプロジェクトの軌道をより細かく説明。研究がたゆまぬ努力を必要とするプロセスなのかを垣間見ることができました。

複雑な現象が細胞からどう生まれているか、細胞が集まることでなぜ複雑な行動に繋がるのかという問いを突き詰めたい!という末岡さんのパッションに部門を超えて財団生・関係者・OBから質問が集まり、引き込まれるように話を聞くオーディエンスの姿がありました。
研究だけではなく、課外活動にも力を入れている末岡さん。今後も活躍を応援しています。



3. 成果報告②スポーツ部門51回生 小野光希さん「2023/2024スノーボードHP成果報告」

次は、小野光希さんに登壇していただきました。現在早稲田大学のスポーツ科学部でスポーツ科学の勉強をしつつ、世界中でスノーボードハーフパイプでの活躍を見せています。ハーフパイプという競技の見どころを説明した後、今季の成果について発表をしてくれました。多くの結果とともに、振り返りも豊富な一年でした。

2023年12月にはアメリカワールドカップCopper Mountain大会での2位。シーズン最初から好成績を残しました。2024年1月にはスイスワールドカップLAAX OPEN優勝、X Games 2位、2024年2月のアメリカMammoth Mountain大会ワールドカップとカナダワールドカップのCalgary大会両方で1位に輝きました。

アメリカのMammoth Mountainでは悪天候の中大会スケジュールが急遽変更になり練習で一日しか滑ることができなかった中、柔軟な対応力とコンディションを読む判断力を総合的に培うことをできた、との感想でした。

様々な困難がありながらも、23/24シーズンは全ての大会で表彰台に上がることができました


シーズン最後の国際大会、20243月にはDew Tour2位。技の難易度だけではなく、一つ一つの技、細かい部分の完成度が大事になった大会となり、今後は総合力が必要になってくると感じたそうです。

発表後の質疑応答では、53回生スポーツ部門の開心那さんから「緊張した時にどのように乗り越えているか?」という質問に対して、大学で学んだ心理学をもとにイメージトレーニングをして、自分がうまく技を見せれた時の映像を想像する工夫を話してくれました。また、ギリギリまで脱力を意識して筋肉を和らげることも考えているようです。

23/24シーズンの目標通り、参加した全大会で表彰台に立つことができた小野さん。2026年度のミラノ・コルティナオリンピックでのメダル獲得に向けてのトレーニング、頑張ってください!



4. 成果報告③器楽部門51回生 吉見友貴さん
午前の部奨学生成果報告のトリを務めたのは、現在米国ボストンにあるニューイングランド音楽院でピアノを学ぶ吉見友貴さんです。器楽部門以外の奨学生にも向けて、「音楽家、音楽留学とはどのような生活をしているのだろう」という疑問に答えるべく、音楽院の生活を中心に活動報告を行って頂きました。

マサチューセッツ州ボストンに位置するニューイングランド音楽院はアメリカ最古の音楽院。Student IDを活用し、周辺にあるボストン美術館やボストン交響楽団に赴いてはインスピレーションを得ているそう。
ある1日のスケジュールからは、朝から練習、performance class、授業、レッスン、宿題…と忙しくも充実した生活を垣間見ることが出来ました。2月には卒業リサイタルをおこない、4年間の集大成として素晴らしい演奏会になったそうです。

授業や練習はもちろん、世界各国での演奏活動やレコーディングなど多忙を極めます

休日の過ごし方として、料理に励んでいると教えてくださいました。料理をしている時間はリフレッシュになると同時に、調味料の匙加減を考える工程が、ピアノを弾く上で感情をどれだけ出すかという思考に繋がっていると思うという興味深いお話も聞けました。

発表後の質疑応答では、様々な部門の奨学生から”緊張への対処方法” “卒業リサイタルのプログラム” “日常生活の出来事と音楽の関わり” “巨匠たちが築いたものにどのように価値を加えていくのか”など多くの質問が寄せられ、一つ一つに丁寧に回答してくださいました。
日本・アメリカでの演奏活動、CDレコーディング…と精力的に活動されている吉見さん。今後も活躍を応援しています。



5. キャンパスツアー① ボストン: ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学
2024年2月上旬に、小野祐さん、清原大慈さん、白井那奈子さん、松崎健さんの学術部門奨学生4人がボストンに集まって行ったキャンパスツアーの様子を紹介しました。小野さんによるハーバード大学と清原さんによるマサチューセッツ工科大学(MIT)のそれぞれの特色の説明があった後、現地で収録したキャンパスツアーの動画を放映しました。

ハーバード大学では、現在学部3年生として在籍されている小野さんの案内でキャンパスのツアーを行いました。小野さんが一年生の時に住んでいた寮や、有名なジョン・ハーバード像、物理学科棟の中にある小野さんのオフィスなどを回り、小野さんがツアーガイドとなってトリビアを交えながら解説していただきました。

ハーバード大学の中を一通り見て回ったのち、MITのキャンパスへ向かいました。通称「インフィニット」と呼ばれる長い廊下や、日本のブランドのコーヒー専門の自動販売機など、見どころ沢山のツアーとなりました。学部時代にMITで勉強していた清原さんが、MITのユニークな伝統文化である”Hack”にも触れながら解説を行なっていただきました。




動画放映の後には、参加した清原さんが参加者代表として挨拶を行いました。ボストンエリアにはたくさんの財団生がいるものの、普段はなかなか交流する機会がないことについてコメントし、キャンパスツアーを通して他の奨学生と交流することで刺激を受けたと話しました。

質疑応答では、ボストンでのコロナ禍の学校生活の様子、ハーバード大学での普段のスケジュール、プリンストンとハーバード・MITとの雰囲気の違いなど、ボストンでの日常の生活に興味津々となって多くの奨学生から質問があがりました。



6. キャンパスツアー②ニューヨーク: コロンビア大学
ニューヨークキャンパスツアーは学術部門奨学生の原野新渚さん、筧路加さん、末岡陽太朗さん、そして西健斗さんが集まりました。学部生の時にコロンビア大学に通ってた原野さんが大学の見どころを動画にし、紹介してくれました。

特に面白かったのが大学敷地内にあるアイコンのAlma Materの銅像にフクロウが隠れているということです。入学式で一番最初にフクロウを見つけた学生がValedictorianになると言われています。キャンパスツアーとその後の食事会、交流を楽しんでもらえたようです。




キャンパスツアーの動画の紹介後、別々の4校から集まった奨学生が一人一人の出身校について紹介をしてくれました。ペンシルバニア大学、ハーバード大 学、ジョン・ホプキンズ大学、そしてニューヨーク大学、それぞれコロンビア大学との共通点、相違点が多くアメリカの東海岸の大学それぞれの特徴を学ぶことができました。

奨学生OBの20回生学術部門 猪飼宏さんから「このキャンパスツアーの企画は素晴らしいですね。現地で近くにいても日々顔を合わせない皆さんにとって良い交流になっている様子が伺えましたし、遠く離れた皆さんの日々の様子が垣間見えて、日本の大学で学生が快適に過ごす環境づくりの参考にもなりました。報告して下さった皆さん、ありがとうございました。企画された現役/事務局の皆様も、ありがとうございました。」とのコメントをいただきました。



7. 卒業生紹介 卒業生代表挨拶 スポーツ部門51回生上野優佳

2023年度卒業生一覧

卒業生紹介では今年度をもって財団をご卒業される12名の方の紹介を行いました。卒業生代表として、スポーツ部門51回生上野優佳さんよりご挨拶を頂きました。

卒業生代表挨拶を務めた上野優佳さん

2024年1月の時点でパリオリンピックの出場権を獲得でき、これからの目標はパリオリンピックでの金メダル、とお話ししてくださりました。財団生として入学した当初に建てた目標をもとに今も活躍を続けています。今後のご活躍も応援しています!



8. 理事長挨拶



最後に財団代表理事の峰岸真澄さんからのご挨拶をいただきました。744名の奨学生を輩出している江副記念リクルート財団、世界でずば抜けた活躍を目指す学生の応援を続けていきたい、とお話しされました。

世界中多くの国で不透明な社会状況が続く中、財団生への応援体制は変わらなく盤石な体制を築かれています。財団のユニークなポイント(1)様々な専門分野をもち世界中で活躍している奨学生同士の絆、そして(2)事務局のスタッフの暖かい完璧なサポート、というところを大事にして、常に進化をし続けたいとのお話しでした。「財団生には自分の好奇心を大事にし、それぞれの分野に没頭し、長期的に道を極めていただきたい」という財団からの期待も伝えてくださいました。


昨年に続き奨学生が運営委員を務めた今回の総会は、財団生のローカルな交流も垣間見ることができた総会になりました。挑戦する姿勢を持ち続け、世界中で成果を出し続ける財団生の発表に、多くの財団生が刺激を得たことと思います。

第53回総会 午前の部 総会委員
学術部門51回生 白井那奈子
学術部門48回生 原野新渚
学術部門48回生 筧路加
学術部門51回生 松崎健